コーヒー×炭酸の組み合わせは消費者に受け入れられるか(撮影/写真映像部・新崎美菜子)
コーヒー×炭酸の組み合わせは消費者に受け入れられるか(撮影/写真映像部・新崎美菜子)
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 5月下旬に伊藤園が発売した商品に、SNSがざわついている。

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<なぜ性懲りもなく?>
<ここ数年でトップクラスにヤバい>

 発売から1カ月たった今も世間をざわつかせる商品の正体は、FIZZPRESSO(フィズプレッソ)と名付けられた「炭酸コーヒー」だ。同社が運営するタリーズブランドから、ライム風味の有糖(ライムトニック)とほろ苦い無糖(ビターブラック)の2種類が発売された。

 コーヒーと炭酸という意外な組み合わせに対して、SNSでは冒頭のようなネガティブな反応が多いことは事実だが、一方で、「箱買いした」「リピートしたくて探し回った」など肯定的な意見もある。

 実際、本誌デスクも最初は「なんでコーヒーに炭酸入れるの?」とぶぜんとしながら口をつけたが、その後、会議中にぶつぶつ言いながらも飲み続けていた。

「なんか……、止まらなくなるね」

 記者自身も、最初に買った時は完全に失敗だと思ったが、取材することになり飲み続けているうち、すっかりはまりつつある。何とも人の心を揺さぶる飲料なのだ。

 開発を担当した伊藤園マーケティング本部の宮内智明さんは言う。

「『コーヒーっておもしろいんだ』と思っていただける、コーヒーの新しい魅力を感じられる商品だと思います。ブランドの主軸として打ち出すものではなくチャレンジ商品として自動販売機やスーパーを中心に展開し、SNSなどでは本当にいろいろな反響をいただいています」

 確かにSNSでは賛否両論が飛び交っているが、コーヒーに炭酸を掛け合わせた商品は目新しいものではないという。清涼飲料水研究家の久須美雅士さんはこう話す。

「実は、炭酸×コーヒーの組み合わせは、コーヒーの新しい飲み方の提案として各社が何度も新商品を投入しています。ただ、いずれも市場に根付かず、比較的短期間で終売になってきました。今回の発売にも、正直『またか』という思いはあります」

 久須美さんが言うように、炭酸×コーヒーは、缶入りの古いものは1970年代ごろから存在し、2000年代以降は各社が競うように新商品を開発してきた。中でもこのジャンルに繰り返し挑戦してきたのがサントリー食品インターナショナルで、古くは1983年に「スパークリングコーヒー21」、翌84年に「カフェアナ」という炭酸コーヒーを発売。近年では、2012年に330ミリボトルの「エスプレッソーダ」、13年には「ボス ブラックスパークリング」を展開し、18年に缶飲料「ボストニック」を売り出した。UCC、ブルックス、アサヒ飲料なども10年代に同様の商品を発売している。伊藤園は比較的新参だが、23年にブラックコーヒーに炭酸を加えた「ガッサータ」を発売、今回が二度目の挑戦になる。

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