アドラー心理学では、こうした「どーせむり」のように相手を見下す姿勢を「タテの関係」として、好ましくないとしています。

 ここでいう「タテの関係」とは、上司部下、親子といった関係を指すのではなく、言った側が「お前なんか無理」と下に見ているニュアンスが含まれて、相手への評価や支配が生まれる関係を指しています。
 

 一方、アドラーが推奨するのは「ヨコの関係」です。これは、お互いを対等な立場、一個人として尊重し、同じ目線、対等な立場で対話や協力し合う関係を指しています。

 ヨコの関係では「わたしとあなたは対等である」という意識が土台にあるので、否定的な言葉を使わずに、建設的な関わりを続けやすくなります。
 

 わたしが研修をしていると、参加した方々のなかにすぐ「難しい」と口にする人がいます。「大切だけど、難しいですよね……」と言うたびに、脳が「難しいから、やらない」の方向へ向かっているわけです。

 だからわたしは、

「難しい」の代わりに「チャレンジングだね」「取り組みがいがある」「面白い」という言葉を使ってみませんか?

 と提案しています。
 

 あるヘルスケアメーカーで論理的思考が強い課長さんがいたのですが、「難しい」が口ぐせで、メンバーと話すたびに「それは難しいね」「うーん、難しいんじゃない?」と返していたら、誰も意見を言わなくなってしまったそうです。

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