
当初イランの核兵器開発を阻止するとしていたイスラエルによる攻撃だが、次第に「体制転覆」という声も。トランプ大統領も参戦を示唆。その後、アメリカはイランの3つの核施設を攻撃した。一体どうなるのか。AERA 2025年6月30日号より。
【図】イラク戦争のような過ちは避けたい 中東各地に広がる緊張
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「イラン政権は非常に弱いので、そうなる可能性がある」
ネタニヤフ首相は6月15日、米FOXニュースにイランの「体制転覆」について問われて、そう答えた。
「私たちは最高指導者(ハメネイ師)が隠れている場所を正確に知っている。今は彼を排除(殺す!)つもりはないが、そろそろ我慢の限界」
トランプ大統領は17日にSNSに書き、「無条件降伏!」と続けた。
18日、ハメネイ師の声明がイランのテレビで放映された。
「我々は決して降伏はしない。米国が軍事介入すれば取り返しのつかない損害を負うことになる」
イスラエルが13日未明に開始したイランへの大規模攻撃は、当初、イランの核兵器開発を阻止するとしていたが、次第にイランの「体制転覆」という声が出始めた。
トランプ大統領もG7首脳会議を初日で切り上げてワシントンに戻った後、「停戦よりも大きなことだ。本当の終結だ」と、攻撃への参戦を示唆するような言葉を発した。
ネタニヤフ首相は攻撃初日の13日夕、「今回の攻撃は歴史上、最も偉大な軍事作戦の一つ」と称賛した。核関連施設、軍施設など100カ所以上を空爆し、イラン軍参謀総長、革命防衛隊総司令官ら軍のトップ2人の他、複数の軍高官や、複数の核科学者が一気に殺害された。
米の容認に近い合図
イスラエルのハアレツ紙は「情報機関モサドは軍と協力して数年がかりで、イランの軍幹部や核科学者の情報を収集した」と書いた。
別の記事では、ネタニヤフ首相は2024年夏ごろ、イランを最終的な標的として軍とモサドに計画立案を指示。イスラエル空軍と軍情報部は昨年11月から作戦計画の策定を開始したという。
11月はトランプ氏が大統領選に勝利した月であり、イラン攻撃が、2025年1月のトランプ大統領就任で動き始めた。「6月初めには“限りなく容認に近い”合図が(米国から)示された」と報じる。
米メディアAXIOSもイスラエル当局者の話として、トランプ大統領は攻撃前は、攻撃に反対する振りをしていたが、「我々は明らかなグリーン・ライト(承認)を得ていた」と語ったという。