
今週の水曜日(6月25日)にはフジ・メディア・ホールディングスの株主総会がある。
当コラムは、週刊文春の昨年暮れの報道以来、これは、単なるセックス・スキャンダルに終わらず、放送業界の再編につながる事態になると指摘してきた。
今回は、株主総会の評決を予想し、その結果何が変わり、今後の焦点がどうなるのかを書いてみたい。
ダルトン側提案に株主はのらない
焦点は、ダルトン・インベストメンツ側が出した「第6号議案」がどうなるか、としきりに報道されている。アクティビスト・ファンドのダルトンは、会社側提案11名と違う12名の取締役リストをだしている。
「自分たちの候補者がひとりでも、フジの取締役に入れば劇的勝利だ」と、ダルトンの最高投資責任者のジェームズ・ローゼンワルドは、各メディアをはしごして宣言しているが、一人も取締役になることはないだろう。
ダルトン側の提案は、あまりにもプロ意識に欠け、まともな株主であれば、まじめにとりあうようなものではない。
提案書の冒頭にあるのは、「面白くなければテレビじゃない」のキャッチフレーズ。
正直目を疑ったが、これは、日枝久時代のフジのキャッチフレーズ「楽しくなければテレビじゃない」のもじりだ。
そもそも第三者委員会の報告書が指摘したような、人権無視のパワハラやセクハラが横行することになったのは、40年の日枝独裁の下の蛸壺で、幹部社員が常に上を見て仕事をすることになったこと、そうすれば安泰の驕りが生んだものだった。
ダルトン側の取締役候補の一人、近藤太香巳(現NEXYZ.Group代表取締役社長)はお披露目の4月17日の会見の席上、同じダルトン側の取締役候補の北尾吉孝のことを「本来は総理大臣に相応しい方」と褒めそやしたが、このキャッチフレーズを考えたのも近藤だ。そのことを株主提案の略歴に自慢たらしく書いている。
このセンスのなさ。
防戦するフジ側は、この6号議案を受け入れないと発表した5月16日にその理由を「株主提案候補者は、全員が監査等委員でない取締役候補・社外取締役候補であることから、監査等委員である取締役や業務執行取締役が不在になり、会社法上不適法となるため」としていた。