確かに、会社法上、株主総会時に監査等委員としての取締役は別に明示しなければならない。実はダルトン側はあわてて、すでに提出した名簿の中から3名を監査等委員として変更したい、とFMH側に申し出たが「会社法上の期限が過ぎている」として拒絶されている。

 つまり、ダルトン側に、会社法を熟知した弁護士がついていない、ということになる。

清水賢治は暫定政権として次の最強内閣を

 では、フジ側の取締役候補案はどうか?

 7名中4名は、フジテレビの元社員である。社長と常務という枢要のポジションは、清水賢治と若生伸子(わこうのぶこ)というフジテレビに新卒入社した幹部が占めることになる。

 私は以前このコラムで日航再建を果たした冨山和彦が「基本的に全員交替、ただ業務の継続性という意味からいって管財人的に清水さんが暫定的にやる」と言ったことに賛成。

 フジに縁故入社ではなく入った人たちは極めて優秀、そのことは、清水の受け答えをみていてもわかるし、若生伸子には一度上智の授業にTVerの社長として来てもらったことがあったが、きわめて整理されたプレゼンを学生にしてくれた。

 また、顔が見えないフジの事務方も、取締役女性比率3割、取締役の平均年齢の10歳以上の若返りなど、世間の批判を丸飲みしてくるあたりも、その俊敏さが窺える。

 が、今は、メディアに不連続な激変が起こっている時代なのだ。

 1990年代、金融はそうした時代を迎えたが、この時も銀行の人たちは、きわめて優秀だった。が、冨山が指摘するように、そうした人たちは、平時には能力を発揮できるが、非連続のディスラプションの時代には、為す術がなく、自らのポジションを守ることに汲々とし、組織は突然死あるいは緩慢な死を迎えてしまう。

 戦後最大の負債額で倒産をした日航もそうだったと冨山は言う。

「極めて優秀な企画畑の人たちが経営をしていたが、ああいうことになってしまった」

 だから偏差値秀才ではない「強いCEOが今のフジには必要だ」(冨山)。

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