AERA 2025年6月23日号より

 パーソル総合研究所の調査では、上司のケアや同僚のサポートが更年期女性の継続就業意向に好影響を与える結果も出ている。具体的には上司からの「評価の透明性(評価基準の明確な説明など)」「健康の重要性伝達」「柔軟な働き方の許容」といったケア、同僚からは「情緒的支援(相談に乗ってくれたなど)」といったサポートが行われていると、更年期女性の継続就業意向が高いという。

チャレンジをためらう

 一方で、「職場の理解不足」という認識や経験がある場合、継続就業意向は低くなる。実際、更年期症状の状態やケア、治療方法、症状による働き方の調整について上司に相談をしている女性は1割程度、同僚に相談している女性は2割未満にとどまっている。

「更年期の症状で体力が落ちた」と嘆くスタートアップに勤務する50代女性はこう訴える。

「私は職場で最年長に近く、会社のメンバーは男性が中心です。更年期症状については全くピンとこないと思うので、周囲の人に積極的に話すことはありません」

 さらに、キャリアアップにつながる転職に後ろ向きにならざるを得ない理由については、こう説明した。

「更年期で体力に不安があれば、新たなチャレンジをためらうのは当然かなと思います。中途採用面接で『更年期症状があり、お休みをいただくかもしれません』とはさすがに言いにくく、症状があっても言わずに『頑張ります』と無理してアピールせざるを得ない。そう考えると、踏み込めないなと思います」

 とはいえ、更年期の症状はずっと続くわけではない。「更年期症状を理由にキャリアを諦めないでほしい」と田中さんは強調する。

「育児も不妊治療も更年期症状も、ある程度自身で裁量をもって働く時間帯や場所をコントロールできれば、かなりラクになると思います。転職を考える場合、リモートワーク環境がある会社なのか、フレックスタイムの有無なども目安にしてもらうのがおすすめです」

(編集部・渡辺豪)

AERA 2025年6月23日号より抜粋

こちらの記事もおすすめ 【もっと読む】50歳からの転職を考える時、無視できない“更年期症状” キャリアの節目に育児や介護が重なるケースも
[AERA最新号はこちら]