フリーWi-Fiが姿を消していった理由
そもそも、日本国内を見渡すと、フリーWi-Fiは次々に終了している。2021年には都営バスの「Toei Bus Free Wi-Fi」が終了。2022年にセブン&アイグループの「7SPOT」、ファミリーマートの「Famima_Wi-Fi」、東京メトロの「Metro_Free_Wi-Fi」(車両内)、東武鉄道の「TOBU FREE Wi-Fi」などが終了し、2024年にも小田急電鉄の小田急ロマンスカーの「odakyu Free Wi-Fi」が終了している。
フリーWi-Fiが続々と整備されていたのは、2020年に予定されていた東京オリンピック・パラリンピック開催に合わせ、訪日外国人観光客向けに進められていた側面がある。ところが東京オリンピックはコロナ禍の影響で約1年延期したうえ、無観客開催となった。
各社にとって、想定していた需要が消えたこと、コロナ禍で事業へのダメージが大きかったことで、フリーWi-Fiにコストを掛け続ける余裕がなくなり、終了につながったのだろう。
同時に、都市圏で急速に進んだ5Gの普及により、フリーWi-Fiの必要性が下がったことも後押ししたと考えられる。
「フリーWi-Fi後進国」の汚名返上なるか
しかし、現在はご存じの通り、インバウンド需要は復活している。観光庁の訪日外国人旅行者を対象にとったアンケート(2023年11月~2024年2月調査)によると、旅行中に困ったことは、「ごみ箱の少なさ」(30.1%)、「施設等スタッフとのコミュニケーション」(22.5%)などが多かったが、「無料公衆無線LAN(フリーWi-Fi)環境」という回答も9.6%と約1割いる結果に。
過去にも同様の調査をしており、フリーWi-Fi環境に対する不満は2018年度では18.7%と約2割もいたが、2019年度は11.0%まで減少し、そこからさらに微減した形だ。
日本はもともと、フリーWi-Fiの設置が海外の先進国と比べて少ないと言われている。導入コストや維持費がかかるため、自治体や団体などによっては設置できていないところも少なくない。
SIMカードやプリペイドSIM、eSIMなど複数の選択肢があるものの、外国人観光客にとってフリーWi-Fiは今でも利用率が高い大切な手段なのだ。その他、「5Gがつながる場所が少ない」という不満もあるようだ。
コロナ禍が明けて外国人観光客は急増しているものの、先ほど挙げたように一部の公共交通やコンビニではフリーWi-Fiが使えなくなっている。代替するはずの5Gも、国内全域に十分に行き渡ったとは言いづらい状況だ。需要が高まっている今こそ、国を挙げてフリーWi-Fiをもっと充実させたり、5Gエリアの拡大に力を入れたりするべきではないのだろうか。