かつて分散しているおカネの動きを毎月、週末に集計して、何時間も大変だった。ネット家計簿ができて簡便さに感動したし、利用者も喜んでくれた(写真/狩野喜彦)
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 日本を代表する企業や組織のトップで活躍する人たちが歩んできた道のり、ビジネスパーソンとしての「源流」を探ります。AERA2025年6月23日号より。

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 2004年1月、ソニーの経理部から、東京駅八重洲口に本社があったマネックス証券へ出向する。27歳だった。マネックスはインターネットで証券取引を扱い、ソニーが出資していた。創業5年目で社員は約40人。若い会社は、活気にあふれていた。

 配属先はCEO室で、CEOは創業者の松本大社長。その直属の部下で、室と言っても自分1人。社長の弁当の手配から始め、提携や買収、投資家向け経営説明会、新規プロジェクトなどへ関わり、きつくても面白い日々だった。

 当然、松本氏の動きを間近にみる。驚いたのは、昼も夜も誰かと会って意見や情報の交換を重ね、社長なのに誰よりも考え、誰よりも働いていた。「起業で成功する人は事業が大当たりして、一足飛びに地位が上がった」と想像していたが、違う。「成功するには、ここまでやらないといけないのだ」と学んだ。

 2012年5月にマネーフォワードを設立して以降、ずっと、手本になっている。辻庸介さんがビジネスパーソンとしての『源流』になった、という日々だ。

 マネーフォワードは、インターネットを利用した金融データサービスの会社。主力の「マネーフォワードME」は月額500円(税込み)で、銀行口座の出入りやクレジットカードの支払い、公共料金の決済などが入ってくるオンラインの家計簿。登録者は約1700万人だ。

 もう一つは、個人事業主や中小企業向けの会計支援サービスで、個人事業主は月額990円(同)から。店ならレジと会計ソフトをつなぎ、支出や収入を管理してくれる。請求書などを自動的に発行するサービスもある。登録数は、40万社余りになる。

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