社長から教わった仕事のアウトプット増やす「方程式」

 マネックスへの出向期間は3年。満期がきてもまだいたかったので、転籍した。あるとき、松本社長に「どうしたら、もっと仕事ができるようになりますか」と尋ねると、「アウトプットの方程式」を教えてくれた。

 アウトプットは生産高や出力量の意味で、「単位時間のアウトプット量×使った時間×コミュニケーションの伝導率」で決まる、と言う。単位時間のアウトプット量は仕事の効率を示し、コミュニケーションの伝導率とともにすぐには上がらない。「きみにいまできるのは、働く時間を増やすだけだ」と告げられた。

 マネーフォワードの創業以来、毎日、公認会計士らサービスに関係が深い人たちと会い、助言を聞いて改善点を考える。時間効率も高め、コミュニケーション力も磨いている。松本氏との日々から生まれた『源流』からの流れは、着実に水量を増してきた。

 1976年6月、大阪府池田市で生まれる。会社員の父と専業主婦の母、2歳下の弟の4人家族。幼稚園のときに大阪市天王寺区へ転居し、大阪教育大学附属平野小学校から甲陽学院中学校へ進む。

 母方の祖父に、大手家電メーカーの社長がいた。中学生のとき、祖父に「人は、これをやってほしいと頼んで、10頼んだら1やってもらえたらありがたいのだ。人には人の事情があって、そんなに自分の思い通りにいかないよ」と言われた。「社長でもそうなのか」と驚いたが、トップに立ってみて、それは実感する。祖父の言葉は、『源流』の水源になっていた。

 甲陽学院高校を出て、96年4月に京都大学農学部へ入り生物工学を学ぶ。高校で始めた硬式テニスの部活に加え、テニス教室でコーチの助手もした。2001年4月にソニーへ入社。インターネット関連部署へいきたかったが、辞令は経理部経理課。同期の面々が「インターネット○○」や「○○メディア」と片仮名の部署だったのに対し、漢字だけで落胆する。

 3年目、マネックス証券への出向の社内公募に応募。CEO室からマーケティング部へいき、先物取引会社や香港の証券会社の買収などもあって、社内はグローバル化へ向かう。議論も英語が増える。「まずい、このままでは経営へ参加できない」と思い、09年秋から米ペンシルバニア大学の経営大学院ウォートン校へ留学した。

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