
米国大陸の東と西通信ソフトで重ねた金融データサービス
ここで、マネーフォワード創業の足がかりを得る。野村證券から西海岸のスタンフォード大学へ留学していた瀧俊雄氏との出会いだ。ウォートン校へきていた日本人が「インターネットを使った金融サービスで、相談できる人を探している」とのことだった。
2人で、2010年初めから米国大陸の東西にいて通信ソフトで「資産運用が簡便にできるソフトをつくろう」と議論。翌年春に「資産データを一元管理するサービス」へたどり着くが、誰がやるかまで進まずに、帰国した。
その機中で読んだのが、フェイスブックの創業者マーク・ザッカーバーグの起業に至るまでの本だ。創生期のわくわく感が伝わり、「そうか、自分が会社を辞めてやればいいのだ」と頷いた。
マネックスへ戻り、週末に会社の会議室を借りて瀧氏と話し合うが、「議論ばかりしていても意味ない。サービスをつくろう」と、事業化へ進む。以前から知っていた面々が参加し、新宿区高田馬場のワンルームマンションを借りた。家賃は月10万5千円、いまも覚えている。2012年5月にマネーフォワードを設立。全員で6人、勤め先を辞めて、集まった。
オンライン家計簿「マネーフォワードME」は、ここで生まれる。翌年、渋谷区恵比寿のひと回り大きい部屋へ移り、個人事業主ら向けの会計支援も始める。初日、ビアホールへいき、みんなで乾杯したのも、いい思い出だ。
2017年に株式を東証マザーズへ上場し、いまトップ企業が並ぶプライム市場だ。地方銀行と連携し、振り込みやローンも始めた。全国で40行以上へ客向けのアプリを提供している。思ってもいなかったが、実は、金融と技術は数字同士で、相性がいい。
毎日、誰かと会って、意見や情報を交換する。社員の過半は技術者で、彼らとのコミュニケーション伝導率も、高めている。『源流』からの流れは、止まることはない。(ジャーナリスト・街風隆雄)
※AERA 2025年6月23日号
こちらの記事もおすすめ 奄美の離島で自給自足の集落「自主性」育んだ日々 ANAホールディングス・芝田浩二社長