
S&P500の予想PERとは各銘柄の予想EPS(1株当たり利益)と現状の株価を比較した指標。この倍率が高くなるほど割高といえる。
地口さんに取材した2025年3月にS&P500の予想PERは18倍台まで低下し、過熱感が薄れていた。
トランプ大統領が「相互関税」の具体的な内容を発表すると、S&P500の下落に拍車がかかった。
事前予想を上回る高税率だったことから「輸入物価の高騰により米国経済自体も景気後退に陥る」との懸念が拡大したのだ。
この急落に伴い、予想PERはさらに割安な水準へ訂正された。
「S&P500の直近5年間における予想PERのボトム(下限)は13〜14倍です。ブラックロックでは、S&P500に採用されている500社の営業利益が今期以降に10〜15%程度の伸びを示すと想定しています。
その点も加味すれば、足元の米国株は確かに割安な水準にありますね」
割安=買い時かもしれないが、米国の景気が実際に悪化すると株価はもっと下がる気がする。
良悪シナリオ

2025年下半期から2027年までのいいシナリオと悪いシナリオを推察していただこう。
まずはいいシナリオを3パターン。
「米国の物価上昇率が2%台前半まで低下する一方、経済成長率が実質2〜3%の水準で推移すれば、FRB(連邦準備制度理事会)は追加利下げに踏み切りやすくなります。
結果、金融市場でもリスクを取りやすい環境が整います」
2つ目のいいシナリオはAI革命が次のステージに向かうこと。
「AIを中心とした革新的テクノロジーが、多様なビジネスに活用されていきます。すると労働生産性の向上で潜在成長率が高まり、新たなサービスが台頭します」
新たなサービスを生んだ企業が、次のアップルやエヌビディア級に伸びれば米国株の株価を牽引していく。
3つ目は「イスラエルやウクライナの紛争が終結に向かうという筋書き」とのことだった。
悪いシナリオは2パターン。
「トランプ政権が地政学リスクへの対処で欧州と対立し、主要国の中で孤立するというものです。経済・外交・軍事政策面で足並みが乱れると、市場参加者が米国市場への投資を手控えます」