米を買ったことがない人は、案外多い。

 実は私もけっこう頂戴する。米農家を営んでいるご贔屓さんがご厚意で送ってくれる。また地方で独演会があったとき、そこが地元の後輩に前座やゲストをお願いすると、御両親や御親戚が楽屋に挨拶にきてくれて、「いやいや、いつもお世話になっております」「とんでもない、こちらこそ」「つきましては私、米を作ってまして。新米の時期になりましたら師匠のご自宅へお送りさせていただきます!」。

 年によっては、30キロの米袋が2〜3袋も我が家の玄関に積まれることがある。

 本当に助かっています。

 だから前大臣の失言を聞いて「いや、オレもそんなところがある!」とちょっと共感してしまった。

 政治家じゃなく、落語家でよかった。

なぜなら売るほどあるから

 あと買ったことがないものとして、これは意外に思われるかもしれないが、扇子と手拭いがある。これはまず買ったことがない。なぜなら真打披露や二ツ目昇進、またお正月に手拭いを染めた際に、仲間内でもらったり交換し合ったりするからだ。

 だから扇子と手拭いがうちには売るほどある。

 ときどきネットオークションに出品されているのを見かけるが、どうかすると業界関係者が売ってるんじゃなかろうか。

 なぜなら売るほどあるから。

 某後輩はどう考えても芸人仲間か関係者が自分のものを出品しているのを見て悔しくなり、それを自らセリ落として、誰が出品したのかを(何となくではあるが)突き止めたらしい。

 やるなぁ。

 あとうちにはTシャツが山ほどある。何かというとTシャツを作りがち、配りがち、もらいがち。一回も着てないものも含め、クローゼットがパンパンだ。でも常時着るものは2〜3枚。どうにかしてくれと、カミさんが言う。でも捨てられない。ラジオのゲストから頂いた見本版のCDや書籍。売るほどあるが、見本なので売れない、捨てられない。

次のページ 人は米を食うと幸せになる