
兵庫県議会は6月12日の6月定例会最終日に、斎藤元彦県知事が提出していた自身の給料削減案の採決を見送り、継続審査とした。斎藤知事らの疑惑を内部告発した元県民局長(故人)の私的情報が県幹部から漏洩した問題を受けた給料削減案だったが、議会内にはこの案を認めると問題の幕引きにつながりかねないという意見が強かった。
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自民党のA県議がこう話す。
「知事主導で幕引きさせるようなことは、あってはならない。そんなことを許せば、斎藤知事はなんも悪くなかったとなりかねん」
昨年3月、元県民局長が斎藤知事らを内部告発した際、斎藤知事は告発者探しを指示。片山安孝副知事(当時)らが元県民局長の使用していた公用パソコンを回収し、告発者を特定したが、その後、パソコン内に残されていた元県民局長の私的情報が県議らに漏洩した。この問題を調べた県の第三者委員会は今年5月に報告書をまとめ、情報を漏らしたのは井ノ本知明総務部長(当時)であり、この漏洩は、斎藤知事や片山副知事の「指示のもとに行われた可能性が高い」と結論づけた。
これに対して斎藤知事は「指示したという認識はない」と否定する一方で、井ノ本氏に停職3カ月の懲戒処分を課した。そして、自らについては「管理責任」があるとして給与を3カ月間50%減額するという案を県議会に提出していた。
「さっさと処分を決めて、最大の焦点である『知事の指示』についてはごまかそうという斎藤知事の意図が透けて見える。真相究明がなされていないのに、処分を決めるというのはおかしい」(A県議)
斎藤知事の「幕引き」を阻止した県議会だが、この6月定例会で、斎藤知事に不信任決議を突きつけることはなかった。
朝日新聞が6月10日付で公表した兵庫県議(83人)へのアンケートでは、斎藤氏を「信任する」とした県議はわずか7人(8%)で、「信任しない」は25人(30%)、「どちらともいえない」は41人(49%)、未回答が10人(12%)だった。斎藤氏が県議会に「信任」されているわけでは決してない。だが、「どちらともいえない」が多かったのは、夏の参院選も近く、県民の支持を得た斎藤知事への立場を明確にしたくない思惑もあるのだろう。