――窪塚さん自身、何が変わりましたか。

 本当の自分の人生が始まりましたね。自分にとって余計なものはなくなり、縁が切れてもいい人たちはいなくなり、本当の友達、仲間、家族は残ってくれていて。そこからリスタートできました。

 その出来事が起こるまでも、好きなことをやってはいたけど……。「自分のことを表現しています。今から表現するので見ていてください」みたいな、ポーズだったところもあったんですよね。

心が動くものだけをやる

――仕事が順調で人の期待に応えているときは自己を見失いやすく、あらゆるものを失ったときのほうが本来の自分に戻れるということでしょうか。

 ピンチのときこそチャンスなんですよ。「雨降って地固まる」ということが本当にあるなと思って。それは、人類史的にもあると考えていて、疫病が流行るといった人類の危機のときに、人はすごく進化すると言われているんですよね。

  起こった出来事自体には、「良い」も「悪い」もない。「良いこと」として捉えて前に進めるのか、「悪いこと」として腐っていくのかのどっちか、ということなのだと思います。だから、あの事故の経験は、今となれば財産になっていて、あのおかげで自信を持っていろいろな話ができたり、仕事ができたり、人付き合いができたりするところもあるんです。

 ――今年は3本の出演映画が公開されます。映画には多数出演される一方、テレビのお仕事は控えているそうですね。

「本当に自分の心が動くものだけをやる」という形をとっているんです。去年、テレビドラマGTOリバイバル」(関西テレビ制作、フジテレビ系)には出ましたが、基本的には23年前、テレビドラマ業界からは自ら去ったんです。理由は、時間と予算に追われていて、関わる人たちの気持ちが本気ではない現場があったから。ある演出家がモニターの前でスポーツ新聞を読みながら、大して芝居を見ずに「OK」と言っている姿を後ろから見たこともある。「ここは僕のいる場所じゃないな」と。自分が情熱を燃やしてやっていることは、一緒になって熱くなれる人たちとやっていきたいんですよね。

次のページ 腸の健康が大事だと思うようになったのは