
AERAで連載中の「この人のこの本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。
いつのまにか本屋は「わざわざ行く」場所になってしまった。いつから、どのようにして本屋は消えていったのか。出版社・取次・書店をめぐる取引関係、定価販売といった出版流通の基本構造を整理し、戦後の書店が歩んだ闘争の歴史をテーマごとにたどる。膨大なデータの分析から、書店が直面してきた苦境と、それに抗い続けた闘争の歴史が見えてくる『町の本屋はいかにしてつぶれてきたか 知られざる戦後書店抗争史』。著者の飯田一史さんに同書にかける思いを聞いた。
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全国で「町の本屋」の廃業が続いている。気軽に立ち寄っていた本屋は「本好きが、わざわざ行く場所」へと変化しているのだ。『町の本屋はいかにしてつぶれてきたか』は、戦後出版史を「町の本屋」の視点から読み解く、これまでにない試みだ。著者の飯田一史さん(43)は、前著『「若者の読書離れ」というウソ』でも、「若者は本を読まない」という通説を覆してきた。
「本屋についての本はたくさんあるので、自分があらためて書くことがあるのかな、と最初は思ったんです。でも書店組合側の資料を調べてみると、大手書店についての本や出版社が出している出版史の本が伝える戦後史とはまったく違った歴史があった。町の小さな本屋はダイレクトに生活がかかっていますから、出版社や取次に対する要望も、切実さが全然違います」