「吉井監督はロウキに技術や体の使い方を丁寧に伝えてきた。しかしロウキは譲れない部分に関して受け入れないこともあった。そのため、『故障発症は仕方がない』という認識のもとでの育成だったと聞く」(ロッテOB)

 ロッテは佐々木の意向を最大限重視し、違和感やコンディション不良を少しでも感じれば即座にストップをかけてきた。昨季も「右上肢コンディション不良」で6月から2カ月近く戦列を離脱したことは記憶に新しい。

「周囲が理論的に話しても、最終的には自分の投げ方を貫いたことで故障癖が抜け切らなかった。昨年時点で最も球威ある球が行く投げ方を選んだのも、1日でも早く渡米したい思いが強かったのだろう」(ロッテOB)

 佐々木、ロッテ球団共に「故障発症しても仕方がない」と腹を括っていたのなら、話の辻褄も合ってくる。

「佐々木のメジャー挑戦に関しては様々な憶測が乱れ飛んだ。プロ入り時の“約束”があったという噂もあるが、最終的にロッテ球団が容認したのは、『将来を考えた場合に現在が売り時』という判断をしたから」(在京球団編成担当)

「今のままでは故障体質は改善できないだろう。しかし年齢的にも若く(現在23歳)、渡米後にメカニクスをイチから作り直す時間はある。場合によっては医学的なメンテナンスも可能。今季からの渡米が最善の判断だったのかもしれない」(MLBアジア地区担当スカウト)

 ロッテ球団は佐々木の獲得を希望する球団と交渉した際、右肩の状態を含めて情報を全て提供していたとされる。

「佐々木在籍中は何かと気を使うことも多かった。何よりも本人には強いメジャー願望があり、球団として手を焼いていた部分もあるだろう。(佐々木放出に関し)周囲からは批判を受け続けているが、近未来を考えた場合に最善の選択だった」(ロッテOB)

 佐々木は「球団の未来」と言われ大きな期待をされたが、実は「禁断の果実」だったのかもしない。25歳ルールもありロッテへの譲渡金も最小限のものになってしまったが、長い目で見れば正しい選択になる可能性もある。佐々木の放出こそが、何かと話題の“VISION2025”最大の成果になる可能性もゼロではない。

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