
写真展「U.F.O.」に込めた意味
開催中の写真展「U.F.O.」には、「未知のもの/ Unknown、忘却したもの/ Forgotten、見過ごしたもの/ Overlooked」という意味が込められている。
台湾の奇祭をカメラに収めた2025年の最新の作品に始まり、原点である03年のエリア51に戻っていくような展示構成で、最後に、旅の合間に自身の記録として撮影したという動画が流れるコーナーがある。自らフィールド音とシンセサイザー音を合成したという音が静かに響き、佐藤さんが紡ぎ出す世界に吸い寄せられそうになる。
これまでと異なるのは、佐藤さんらしい異界に連れて行かれるような心持ちの写真と、何げない日常の情景とが入り混じって、不思議な引力を醸し出していることだろう。
「自分の代表的な、わかりやすい作品もある程度入れつつ、20年やってきたなかでの、記憶の断片みたい写真も選びました。例えば、寝る前とか、車を運転しているときとか、ふと、ふわっと思い浮かぶ情景があるんですよ。これどこだっけ? あ、ペルーでバス乗り継いだところだ、とか考える時間も楽しい。
学生時代の友達と話していて、こういうことあったやん、みたいなことを言われても、1ミリも思い出せないんですよ(笑)。だけど、そういう場面は思い出す。なんでだろうって考えたら、やっぱりこの20年が、インプット過多というか、自分で言うのもなんですけど(笑)、異常だったからだと思うんです。大学出て会社とか行きながら年1回とか2回とか旅行して、っていうのが普通の日常だとしたら、自分は今年だけで考えても1月にインド行って2月に台湾行ってまたインド行って、3月にドイツ行ってスイス行って、とかだから(笑)。海外には1年のうち、半分くらいは行っている感覚ですね」
そうした記憶の断片を集めた作品のなかから、ひとつエピソードを教えてもらった。
「思い浮かんだのは、屋上みたいなところにベッドが置いてある写真ですね。シンガポールのホテルで、もう満室で部屋が取れなくて、その、管理人室みたいなところだったら泊まっていいって言われて、1泊だけしたんですよ。
最近でこそ中級ホテルに泊まるようになったので、あんまりああいう場所に出くわすことはなくなっちゃったんですけど、若いころは毎回、部屋のドアを開けた瞬間の、おお、っていう感覚があって(笑)。閉めたくなるときもあればいいなと思うときもあって、ベッドを置いてある部屋をよく写真に撮っていたんです。いままではどこにも出すものではなかったんですが、今回は、そういう自分の記憶もたくさん入っています」
“奇妙なもの”を撮るときは、できるかぎりフラットに、ニュートラルに撮ることを心がけているという佐藤さん。こうした日常の情景では、どんなときにシャッターを切っているのだろうか。
「たぶん、自分でも言語化できないから撮っているんだとは思うんですけど……やっぱり、なんかいいって思った瞬間ですよね。街の中で音楽を聴いて、いいな、と思うのと同じような感覚で、光の感じとか色の感じとかがいいなと思ったときに撮っていると思います」