あるマンション管理コンサルタントは次のように話す。

「多くのマンションが管理業務を管理会社に委託していますが、旧理事長体制下の秀和幡ヶ谷レジデンスは自主管理を行っていました。こうした自主管理物件では、会計が不透明になり、使途不明金が発生しやすい。銀行口座の通帳もハンコも管理組合の理事長が握ることになるからです。管理会社がいれば、出納帳や事業報告書の作成をしっかり行うため、組合活動の透明性が上がる。異常な組合活動についてアラートを出してくれる第三者を排除したことも、理事長の暴走が進んだ原因と考えられます」

 実は、理事長の暴走責任を問いにくい法律上の問題もある。区分所有法上、住人がいくら異を唱えても、年に1回開催されるマンション管理組合の総会で組合員全員の過半数の支持を獲得できなければ、理事長を交代させることができないためだ。管理に対して関心の薄い住人が多ければ、過半数のハードルは非常に高くなる。

“暴走理事長”を生みやすくなる側面も

 だが、その建て付けは来年大きく変わるかもしれない。今年5月23日に改正区分所有法が成立したためだ。老朽化物件の適切な修繕および維持管理、所有者の高齢化に伴う理事会活動負担の軽減を目的に、総会決議の仕組みが緩和されたのだ。

 現行法では全組合員の過半数の賛成が得られないと「修繕」や「管理規約の変更」などを進められなかったが、改正後には総会出席者の過半数で可決できるようになるといわれている。そうなれば、関心のある住人を説得すれば、総会で過半数を獲得できる可能性があるため、“暴走”に反旗を翻しやすくなる。

 だが、メリットばかりではない。欠席者の票は除外されることになるため、管理に無関心な住人が多ければ、逆に“暴走”を生みやすくなる側面もある。

「今回の改正を経て、マンション管理をめぐるトラブルは増え続けていく可能性もありそうです……」(栗田氏)

 ますます無関心ではいられなくなりそうだ。

(ジャーナリスト・田茂井治)

こちらの記事もおすすめ 絶対買ってはいけない「危ないマンション」 ベランダの「茶色い筋」は要注意!
[AERA最新号はこちら]