昨年、驚きの活躍を見せたのが桜井俊貴(ミキハウス・投手)だ。立命館大時代には4年秋の明治神宮大会で1試合18奪三振を記録するなど活躍し、2015年のドラフト1位で巨人に入団。4年目の2019年には一軍で8勝をマークしている。しかしその後は結果を残せずに2022年限りで引退。2023年は巨人のスカウトとして活動しており、現在活躍している泉口友汰は担当した選手である。
ところがその年のオフに現役復帰を目指して巨人を退団し、ミキハウスに入社。社会人1年目の昨年はエースとして活躍し、チームの都市対抗出場にも大きく貢献したのだ。1年間現役から離れ、しかもスカウトを経験してから再び選手としてプレーするというのはなかなかないことである。ミキハウスには今年巨人を自由契約になった高橋優貴と菊田拡和の2人が加入しているが、それも桜井の活躍があった影響も大きかったはずだ。
桜井の所属しているミキハウスと同じ地区の近畿で存在感を示しているのが北条史也(三菱重工West・内野手)だ。光星学院(現・八戸学院光星)では中軸として甲子園3季連続準優勝に貢献し、2012年のドラフト2位で阪神に入団。4年目の16年には一軍で105安打を放つなど結果を残したが、その後は徐々に成績を落として23年限りで退団となった。
しかし社会人では1年目からレギュラーをつかむと、昨年の都市対抗では2回戦のトヨタ自動車戦で先制の2ランホームランを放つなど、チームの準々決勝進出に大きく貢献。今年も5月上旬に行われたJABA九州大会で4試合で15打数7安打1本塁打、打率.467という見事な成績を残している。甲子園のスターがプロ野球を経て、社会人野球で活躍するというのもまた珍しい事例と言えるだろう。
今回は4人の選手を取り上げたが、企業チームだけでなくクラブチームも含めて、まだまだ活躍を見せている選手は存在している。これから本格化する都市対抗予選、そして8月の都市対抗本選でも彼らのプレーぶりにぜひ注目してもらいたい。
(文・西尾典文)
西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。
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