バウアーが望んでいたのはMLBへの復帰だった。メキシコでプレーしていた昨季中もSNS等を使ってMLB関係者との接触を試みていた。しかし2021年に起こした性的暴行疑惑の影響は続いており、現実を踏まえて次の道を選んだとしても不思議ではない。

「『中5〜6日で120球前後を投げよう』と考え始めたのかも。中4日登板を希望しても、NPBの日程上からそれ以上に登板間隔が空くことも多い。頭が良い投手なので、『現実路線で結果を残した方が良い』と方向転換してもおかしくない」(在京球団編成担当者)

 5月3日の巨人戦以降、5月9日の広島戦(横浜)で124球、5月27日の阪神戦(倉敷)で118球を投げている。試合前後のケアが容易な本拠地・横浜のみでなく、地方球場の倉敷でも多くの球数を投げたことに本気度を感じる。

「長年にわたって中4日、100球をメドに投げ続けてきた。コンディション調整やスタミナ配分が体に染み込んでおり、適応するには時間がかかるかもしれない。しかし技術、メンタル共に超一流投手なので心配はない」(MLBアジア地区担当スカウト)

「マウンド上での配球も変化し始めている。球数とイニングを増やすためなのか変化球の割合も増えた。手抜きというのではなく、変化球の効果的な使い方を模索している。常に考えながら投球している部分は他の投手も参考にすべき」(DeNA球団OB)

 前回DeNAでプレーした2023年は19試合に登板、10勝4敗、130奪三振、防御率2.76をマーク。今季はNPB仕様の登板に慣れることと、前回成績を上回ることがタスクになりそうだ。

「今季の契約内容は前回在籍時の成績をベースに提示されたはず。バウアー側からすると、前回成績を上回れば来季以降への交渉材料にできる。条件次第では他球団へ話を持ちかけることも考えられる」(在京球団編成担当者)

 DeNAとの今季契約は総額9億円規模(年俸、出来高を含む)とされる。まずは出来高の満額を手にできる成績を残しつつ、来季以降の契約交渉に有利な条件を揃えることが重要だ。

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