1993年7月、旧広島1区から自由民主党公認で出馬し、衆議院選挙に初当選した頃の写真。この年の7月29日(誕生日)時点で36歳(紙焼き写真の撮影・東川哲也/朝日新聞出版写真映像部)

 財界を2年間、説得し続けた。2024年、2025年––––、ようやく大企業が賃上げに本腰を入れてきた。

「2025年は定期昇給とベースアップを合わせて平均5.5%の賃金増加です」

 中小企業にも目配りしてある。

「大企業は下請けにしわ寄せをするのではなく、ちゃんと価格転嫁に応じること。

応じなければ公正取引委員会が企業名まで公表する厳しい体制を敷きました。

賃金上昇分を価格に転嫁できる体制をつくる。このことへの理解が中小企業でも進んでいます」

 岸田さんは賃上げがカネの好循環に不可欠なパーツであることを自ら確認した。

「賃上げを支える意味でも、新NISAをはじめとする資産運用立国としての政策を強化していくべきです」

 岸田政権発足時の2021年10月4日に2万8444円(終値)だった日経平均株価は、約3年後の2024年7月に平成バブル高値を突破して、高値4万2000円台まで急騰した。

岸田さんは投資ゼロ

 新NISAが軌道に乗り、持続的な経済成長にも役立つことはわかった。

 では「あのうわさ」は本当だろうか。

 資産運用立国の旗を振る岸田氏がNISAどころか株式投資さえしていないという……。

「2024年11月22日に公開した首相退任時の保有資産は預貯金1000万円、土地と建物1億数千万円ほどでした」

 岸田さんは、やはり投資をしていない!

「政治家は自分が儲けるために改革に汗を流すものではありません。

私に巨額の資産があり、それをフル活用していたら、これまた批判されることになりませんか?」

 確かに岸田さんが自ら「新NISAで大儲け」となれば、世間は「わが利益のための制度改正か」とたたくだろう。

「資産運用立国が大事だと言ってきたのは、日本経済の好循環の実現を金融面で支えるためです。

賃上げと労働移動も重要です。賃金が上がり続けるには、儲かっている分野に人が移動していかないと。

となると、労働市場の柔軟化や働き方改革も必要になります。

政治家の仕事は運用リスクを取って自ら利益を上げることではありません。

いろいろな政策に目配りし、『こうしたら経済が動くんですよ』とみんなに理解してもらい、政策を動かすことが私の仕事です。2年かけてようやく経済が動き出した」

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