事故機と同型のT4は1985年に初飛行した=航空自衛隊提供

事故機が「池」を選んだ可能性

 事故が起こったのは5月14日午後3時8分ごろ、県営名古屋飛行場を離陸してからわずか約2分後のことだった。2人が乗ったT4は離陸後の約1分間は北に向けて順調に上昇し、管制官との交信にも異常はなかった。だが東へ旋回しながら高度約1400メートルに上昇したところで急降下し、レーダーから機影が消えた。

 機体の一部が同飛行場から北東へ約13キロの入鹿(いるか)池で発見され、2人の死亡が確認されている。

 教授はこう類推する。

「偶然池に墜落した可能性もありますが、池に墜落させれば、火災や機体の飛散を最小限にできる。そう瞬時に判断して、水面に激突するギリギリまで機体をコントロールしようとしていたと考えるのが自然だと思います」

万博は連日12~16万人の観光客

 墜落現場の近くには観光施設「博物館明治村」があり、来客たちが事故機の様子を目撃し、爆発音も聞いたと報道されている。明治村は事故を受けて休業、5月24日に営業を再開した。

 万博会場は連日12万~16万人規模の観光客で賑わっている。万が一の事態が起これば取り返しがつかない。

 中谷防衛相は5月16日の記者会見で、ブルーインパルスの派遣について、「非常に強い要望がされているのは承知している」と述べたうえで、「安全に飛行できるのが大前提。それを確認したうえでの判断になる」と話した。

ぜひ飛行してほしい気持ちはあるが…

 ブルーインパルスはコロナ禍に、医療従事者などに感謝と敬意を示すため、飛行したことがある。

 松家教授はこう話した。

「殉職した隊員のことを思うと目頭が熱くなります。やはり安全が第一。もちろん、万博開催中に事故原因が判明し対策を施すことができれば、一国民としてぜひとも展示飛行してほしいのですが、何が何でも万博の閉幕までに間に合わせる必要は全くないと思います」

(AERA編集部・米倉昭仁)

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