報告書を公表して会見する第三者委員会の工藤涼二委員長

県の昨年度の退職者は4割増

 2024年度、兵庫県庁の自己都合退職者は103人で、前年比4割増だった。今年になって兵庫県を退職したAさんはこう話す。

「2つの第三者委員会、百条委員会で斎藤知事による問題がある指示や言動が認められた。でも、斎藤知事には反省の様子もうかがえない。元県民局長らへの謝罪もまともにしない人と一緒に仕事をするのは恥ずかしい、情けないと辞めました」

 Aさんは大学を卒業後、10年以上県職員として勤めていた中堅幹部だった。上司と一緒に斎藤知事に報告をあげる場にも同席したことがあるという。

「井ノ本氏の情報漏えいについては『斎藤知事の指示があった』とかなり前から県庁内ではささやかれていました。第三者委員会の報告書を読んだが、やっぱりなという感じで驚きはありません。井ノ本氏が県議3人にアポイントもとらず情報を見せたというのは、内容の重要性と秘密性を理解しているからでしょう。斎藤知事の指示があってこその行動で、独自の判断で見せたりしません。県職員っていうのは、たいてい上司の指示を仰いで行動しますから。報告書の通り、斎藤知事は指示をしたはずだと大半の県職員は思っている」

 そして、自らの辞職を否定する斎藤知事に対して、こう話した。

「記者会見でまた『県政を前に』と斎藤知事は言っているが、あきれます。内部告発以降、県政はまったく前に進んでいない。職員が淡々と日常の仕事を滞りなく、県として最低限のことをやっているだけです。県民からは『斎藤知事と同じ職場で恥ずかしくないのか』と問われることが何度もあります。前に進むわけがない。多くの職員が、情けない思いで仕事をしているんです」

 一連の問題について斎藤知事を追及している丸尾牧県議に話を聞いた。

「第三者委員会が、斎藤知事が井ノ本氏に漏洩を指示した可能性が高いと結論づけたのは衝撃でした。知事の責任は重く、自ら辞職すべきではないか。県議会でも再び不信任案という対応もあり得ますが、参院選が夏に予定されているので、その影響も想定され、政党所属の県議は引き気味です。6月議会での斎藤知事の対応を見極めてとなるでしょう」

 電話で話をしている途中、丸尾県議は「ちょっと」と言って電話が中断した。その後の電話で聞くと、注文していない商品が宅配便で自宅に届いたそうで、

「また、いやがらせです」

 と言った。斎藤知事を追及する県議らには、今もいやがらせが続いている。斎藤知事が自らの責任を本気で受け止めない限り、兵庫県政の混乱は収まらないのではないか。

(編集部・今西憲之)

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