リングの柱にもびっしりとユスリカ

「万博協会から説明はなかった」

 ユスリカの大量発生は会場内の飲食業者らにも影響を与えている。

 万博会場にキッチンカーを出店しているAさんは困惑した表情でこう話す。

「お客様が行列しているときに、ユスリカが襲ってくることもありました。買っていただいた食べ物を手にしているところにユスリカが直撃して落としてしまったとか、食べ物に虫がついたなどのトラブルもありました。もちろん商品は交換しましたが、こちらでは防ぎようがない。万博に出店する際、ユスリカが出るという説明はありませんでした。事前に説明すべきではないでしょうか。今からでも遅くないから説明してほしい」

万博協会はユスリカが出ることを、事前に知らなかったといい、出典するパビリオンや飲食店にユスリカの発生を伝えていない。

「夢洲は虫の王国です」

 だが、大阪市が2021年12月に実施した万博事業の公聴会では、大阪自然環境保全協会がこんな指摘をしていた。

「今の夢洲は虫の王国です。多くのバッタ、多くのトンボ、多くのチョウ、そして恐ろしいほどの数のユスリカがいます。改めて影響の有無の調査をお願いしたいと思います」

 万博開幕の4年前に指摘があったのに、ユスリカが大量発生して慌てて対策をとっているのだから、公聴会は形式的なもので、きちんと意見を聞いていなかったと言われても仕方ないだろう。

 また、万博開幕直前に、記者がリングの植栽の手入れしているスタッフを取材した際、こう話していた。

「リングの植栽の花が枯れる程度の問題は、カネをかけて植え替えればいいだけです。それよりリングを建設している職人さんが、『すごく蚊が出る。植栽したらもっと増える。ライトアップすればさらにでしょう』と言っていた。実際に作業をしていても、夕方には虫がけっこういますよ」

 開幕前の気温が高くない時期に虫が出ていたのだから、その後の大量発生は予測可能だったのではないか。

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