
ぶーん、ぶーんとすさまじい羽音が耳元で聞こえる。
小さな虫の大群が、顔のあたりを直撃。両手で振り払っても、しつこく虫は追いかけてくる。大阪・関西万博会場に取材に来たが、これでは取材どころではない。
周囲にいた来場者も、
「うわ、これなんや」
「すごい虫やんか」
と駆け足でリングの上を逃げ回っていた。
夢洲にある万博会場に、大量の虫が発生して来場者やスタッフを悩ませている。とくにひどいのが万博の目玉、「大屋根リング」周辺で、リングをささえる柱、上部の植え込みなどにびっしりと蚊のような虫がついているところもある。ライトアップされている部分に多く集まっているようにも見える。
虫の正体は蚊によく似た「ユスリカ」。蚊と違って人の血を吸うことはないが、大量発生しやすいとされる。

対策しても「どれくらい減るかはわからない」
国際博覧会(万博)協会副会長でもある大阪府の吉村洋文知事は5月21日の記者会見で、
「不快に思われる方も多く出ている。私も万博会場に行き来するなか、ユスリカが多くいるのは感じている。看過できないと思った」
と述べ、その対策として、
「アース製薬の社長さんに連絡をして、御社の知見をもって、ゼロは難しいかもしれないが、できる限りの対策に協力してほしいと依頼をし、協力をいただけることになった」
と、大阪府と包括連携協定を結んでいるアース製薬に協力要請したことを明らかにした。
ただし、吉村知事はこうも言った。
「自然界のことなので、どれくらい減るかはわからない」
アース製薬では同日、ユスリカ対策のため製品を万博協会に提供したことを明らかにしている。だが、当面はユスリカが寄ってこないようにする防虫製品が中心で、虫の発生自体を抑える対策は、現地調査をしてから検討していくという。