飯島淳さん(遺族提供)

 発見されたのは、亡くなって2日後の朝。出勤しないことを不審に思った局の職員が警察に連絡し、知らせを受けた70代の父親がマンションに駆けつけると、淳さんは布団の上でスマートフォンを握りしめたまま亡くなっていた。部屋のエアコンはつけっぱなしだった。武蔵野郵便局に異動して、わずか10カ月弱だった。解剖に当たった医師は、「胃の中に固形物がまったくなかった」と説明したという。

「食事すら満足に取れず、つらかったろうって思います。そういう厳しい仕事を息子がしていたのだと、もっと早く思いやってあげられたら……」(母親)

何があったのか

 両親は淳さんの死は過重労働による過労死だと考え、母親が「全国一般三多摩労働組合」に加入し、日本郵便に団体交渉を申し入れたが拒まれ、現在は訴訟に向けて動いている。

 父親は強い口調で訴える。

「郵便局は何があったのかを包み隠さず、事実を明らかにし、同じ悲劇が二度と起こらないようにしてほしい」

 全国の郵便局を運営する日本郵便はAERA編集部の取材に、淳さんが亡くなった原因の認識について、「関係者のプライバシーに係ることなので、回答は差し控えさせていただきます」と詳細な説明はなかった。また、遺族への対応については「引き続き、ご遺族からの情報開示、調査への協力等のご要望に対しては誠意をもって対応させていただきます」と回答した。

 全国の郵便局で、過労死を含む現職死や自死が相次いでいる。

 郵便局で働く労働者やその遺族らでつくる「郵便局過労死家族とその仲間たち(郵便局員過労死家族会)」の調査では、01年から24年の24年間で、全国の郵便局における突然死・自死は、把握できただけで25件に上った。

「氷山の一角だと考えています」

 こう指摘するのは、家族会事務局長で、郵政産業労働者ユニオン元中央執行委員の倉林浩さん(69)だ。

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