「周囲からそう言われた」
1年近くかけて成婚した、親と同居の30代後半の男女のケース。2人とも安定した仕事で年収もしっかりしており、貯蓄額も同年代の中ではかなり多かった。性格も合っている。
それなのに双方とも、「自分の収入では夫婦はやっていけない」と不安を感じてしまい、相手を気に入っているのに一歩を踏み出そうとしなかった。
その根拠を聞くと、「周囲からそう言われた」程度のものだった。ずっと実家暮らしだったため、家を出ると生活費がどの程度必要なのかなどの具体的なイメージができず、不安から抜け出せずにいた。
町さんら仲人は、世間の夫婦と比較しても、お金の問題は何もないことを繰り返していねいに話した。最後は貯蓄額を細かい数時まで伝えて、やっと安心して結婚を決めてくれたのだという。今は幸せに夫婦生活を送っている。
親と同居の「メリット」
「いかに不安を取り除いて、ただの思い込みだったんだと気付いてもらえるか。自分の思い込みを『絶対に正しい』と信じ切っている方もいますから、お見合いを重ねたり、外に出て人とのコミュニケーションを増やしたりして、いい方向に変えてほしいと強く思います」
町さんが「子ども部屋~」に先入観がないのは、町さん自身、結婚した28歳まで親と同居していた当人だからでもある。お金が貯まり、仕事の勉強などへの自己投資もできて、同居がプラスになったと今でも思う。夫も親と同居していて、家にお金を入れるなど負担を分担していたので、結婚時の貯蓄額は「とても少なかった」が、夫婦には笑い話だ。
そんな経験と思いがあるから、町さんは会員に、親と同居している人の良い点や同居のメリットもちゃんと伝えているという。
「結局は、一人暮らしか親と同居かは関係なく、その人次第だと感じています。パートナーと協調できるか。自分と違う部分を受け入れようとするか。自分に足りない部分があるなら、それを埋めるための努力ができるか。相手に求めるばかりでは、なかなか成婚にはいたらないと思います」
子ども部屋おじさん・おばさんのレッテルは、その人の本質や実際を覆い隠してしまう、負の側面もあるということだ。
(ライター・國府田英之)
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