やまのう・ひろし/1971年、兵庫県生まれ。大阪ガスネットワーク(株)エネルギー・文化研究所所属。複合文化施設などで企画・プロデュース業務を歴任。著書に『つながるカフェ』『カフェという場のつくり方』など、訳書に『分断された都市』(撮影:MIKIKO)
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 AERAで連載中の「この人のこの本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。
『歩いて読みとく地域経済 地域の営みから考えるまち歩き入門』は普段のまちを地域経済の視点で観て、写真と地図を多用して解説した〈地理の副読本のような「まち歩き本」〉。一枚の写真に写り込んでいるものから、各地の産業の成り立ちにさかのぼっていく。コンビニが各地に増える仕組み、地獄谷と呼ばれたガード下の歓楽街の行方など、著者独自の観察眼で捉える範囲は広くて深い。第1章のまち読みの視点で、実際にまちを歩いてみると楽しい一冊。著者の山納洋さんに同書にかける思いを聞いた。

【写真】普段のまちを地域経済の視点で読みとく、まち歩きが楽しくなる一冊

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 フットワーク軽く歩く。行く先々で「?」を見つけては地域の人に話を聞き、地域史を調べて推理を巡らせ、営みをドラマのように味わって解を探る山納洋さん(54)。

 自らプロデュースするまち観察企画「Walkin’ About」で、これまでに110カ所以上巡った。続けるうちにまち歩きの達人と呼ばれるようになったが、「まちで出会った謎を謎のまま放っておかない、調べてみるという態度の話だと思うんです」と飄々と話す。

 前著『歩いて読みとく地域デザイン』では、地域づくりのためのまち歩きを「芝居を観るように、まちを観る」イメージで伝えた。

 第2弾の今作は「地域経済」をテーマにするのに、「中学や高校の地理の副読本」のような作りを意識したという。

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