AERA 2025年5月19日号より

 もともと、他人の言葉で印象的だったものをメモしたりはしていました。本を読んでいて目に留まった表現や出合ったことのなかった言葉、偶然耳にしたいいフレーズといったものは、それが著名人であるか否かは関係なしに書き留めておいたりはしていました。

 次第に、自分がそのとき感じたこともメモして残すようにもなったのですが、今回の本でそれらをスライドして使うことはなかったですね。やはりそのとき感じたことは、“点”でしかない。エッセンスやニュアンスを組み替え、書いていきました。

『半分論』の原稿を書いていたのは、ライブの合間やミュージックビデオを撮っている間など、“隙間の時間”です。グループとして活動している時間も多いので、ミュージックビデオを撮っている時もソロショットの間は、ほかの4人の撮影時間の分は空きますから。執筆期間中は、地方に行っても外食は数えるほどしかしていなくて、基本はすぐにホテルに戻り、原稿を書いていました。間に合わせるためには、大まかなスケジュールをもとに逆算して書いていく必要はありましたが、「今日は絶対に書く」「1日1時間は必ず書く」などと決め込むことはなかったですね。“生みの苦しみ”を感じることはなく、楽しさの方が勝っていた気がします。

──ラジオ番組などで、これまであまたの相談を受けてきた。初の著書を出版したことで「村上さんだったらどう思う?」とさらに相談を受けるようになるのでは?

「これを読んでくれ!」

 じつは、それは僕の裏テーマでして(笑)。ラジオに限らず、これまで後輩たちからもたくさんの悩みを聞いてきましたけれど、正直、「これ以上、答えられないよ」と思うこともあって。だから、「もう、これを読んでくれ!」と差し出そうかな、と。

 まったく初めての経験だったので、校了の時に、「この文章に句読点を入れますか? 入れないでおきますか?」といった細かい指摘が原稿に入っているのを見て、「え、これらすべてを決めていかなければいけないの? 大変な作業だな」と感じたことは覚えています。

 すぐに2冊目を書きたいかと言われたら即答は難しいけれど、今回初めて長文を書くという経験をし、みなさんからも感想をいただいて、「その部分が刺さったんだ」「面白いな、ありがたいな」と感じることも多かったなと思います。

(構成/ライター・古谷ゆう子)

AERA 2025年5月19日号より抜粋

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