日本テレビ系のドラマ「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」が好調だ。原作の宮木あや子『校閲ガール』は新刊のときにこの欄で取り上げたので(2014年6月)、先見の明を誇ろうと思ったら、ゲッ、斎藤の批評は辛口じゃんか。しかもドラマは、なによ、おもしろいじゃないの!
校閲者と著者が顔を合わせる機会はないものの、校閲さんの力で毎度危機を逃れている私(今回も作者名を宮本、景凡社を慶凡社と誤記しました。面目ない)。
新刊の『校閲ガール トルネード』はシリーズの第3弾。入社3年目を迎えた河野悦子に校閲部を脱するチャンスがめぐってくる。常勤スタッフの産休で、ウェディング雑誌「Lassy noces」の編集部に異動になったのだ。ファッション誌「Lassy」に憧れて景凡社に入った悦子には姉妹誌でも臨時雇いでも嬉しい。
外注はしない方針の編集部。さっそくドレスのスタイリングを任された悦子だったが、〈なかなか良いわね。センスある、さすが〉と褒められたのも束の間、先輩編集者の容赦ない声が飛んだ。
〈じゃあこのスタイリング全部に七十文字のキャプションつけてみて。花嫁さんに「着たい!」って思わせるような。ちゃんとドレスの特徴も入れてね〉
無理ですとはいえない。が、出てくるのは〈女性らしいフェミニンな〉〈乙女心をくすぐられるガーリーな〉などの下手なフレーズばかり。〈当たり前だ。悦子は今まで様々な文章を読んではきたが、書いてはこなかった。書こうという気もなかった〉。賢い弁明!
1時間かけて書けたテキストはたったの2着分。これではたしかに仕事になりません。一方、作家とモデルを兼業する是永是之こと幸人は小説では芽が出ず、ミラノのブランドの専属モデルにならないかという話が来た。
軽~いノリで進むラブコメ風の小説だけど、天職とは何かという問いも挟んでラストはホロリとさせる。にしても悦子のマシンガントークは原作通りだったのね。1作目ももう一回読んでみます。
※週刊朝日 2016年12月16日号