厚生労働省が公表した2022年の出生数は79万9728人(速報値)。80万人を割り込み過去最少を記録した。死亡者も増え、急速に人口が減っている。人口減少は、日本にどんな影響を及ぼすのか。専門家に聞いた。AERA 2023年4月24日号の記事を紹介する。
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「静かな有事」
日本の人口減少は、そう呼ばれてきた。1967年に1億人を超え、2008年には1億2808万人に。だがその後は、急速に減少の坂道を下る。国立社会保障・人口問題研究所の推計では53年に1億人を割り9924万人となり、65年には8808万人まで減る。
「人口」という土台が縮小すると、何が起きるのか。
第一生命経済研究所主任エコノミストの星野卓也さんは、働き手が減ることによって潜在成長率を押し下げることになると言う。
「その結果、実質国内総生産(GDP)成長率は30年代には0%台前半、40年にはマイナス成長に陥ると予測しています。経済が成長しなければ、年金や介護、医療などの社会保障制度は保険料などの負担増が避けられなくなります」
元内閣府審議官で、少子化や人口問題にも取り組んできた前川守さんは「総人口の減少以上に人口構成の変化に問題がある」と指摘する。
「特に、成長の原動力となる15~64歳の現役世代の『生産年齢人口』の減少が大きな問題です」
65歳以上の高齢者人口は増え続け、2015年に3千万人を超え3459万人。42年に3935万人とピークに達し、その後は微減で65年は3381万人。一方、生産年齢人口は、1995年の8726万人をピークに減り続け2015年は7656万人、65年には4529万人。15年と65年を比べた人口構成比は、高齢者人口がプラス11.8%に対し、生産年齢人口はマイナス9.4%だ。
「経済成長は、資本と労働と生産性によります。生産性は、かつては機械化を進めれば上がりましたが、ITやAIなど第4次産業革命が進展する中、イノベーション(技術革新)を起こすには、教育を受け高度な知的能力を身につけた現役世代の力がより大切になります。その層が減っていくことは、日本の成長力が落ちていくことを意味します」(前川さん)
(編集部・野村昌二)
※AERA 2023年4月24日号より抜粋