
フジ・メディア・ホールディングス(FMH)の取締役選任決議案の名簿に対して、主要株主のひとつダルトン・インベストメンツが、対抗する取締役選任決議案の名簿を出してきた。
当コラムでは2月の段階から、社内でなんとかなると考えている人たちは「脳内お花畑状態」という堀江貴文の発言を引用し、ダルトンが2月3日にフジに送ったレターの中にこんな一文があることを指摘していた。
〈フジの社員が、取締役になることは独立性が疑われるので不可〉
ダルトンの名簿には、SBIホールディングスの北尾吉孝代表取締役会長兼社長など12人があがっているが、フジの社員はいない。
その北尾が、4月17日会見をすると言うので行ってきた。
フジテレビへの提案とブラフ
ちなみに、東京証券取引所のFMHの株価は、会見が報じられた午前中から上がりはじめ、10時50分には、年初来最高値の3433円に達していた。
北尾のプレゼンは百戦錬磨の事業家の胆力。
まず今のフジの社長の清水賢治と既に一対一で会ったことを披露し、「最初は、清水さんのほうは固くなってほとんど話ができない状態だった。が、話し込んでみるとなかなか優秀な人物とわかった」と評価。
そのうえで、フジにもう一度取締役候補案を出し直すことを提案し、「最終的には、話し合いをして会社側提案として、われわれの希望をうけいれた選任案を出すのが適当だと考えている」とした。
会見後、メディアが一斉に報じた
「徹底的に勝負する」
という発言は、前段があってのいわばフジに対するブラフだ。案の定、夕方のFMH社長の金光修の会見では、「(会社側提案の取締役案について)株主総会までさらに検討して改定するつもりだ」とかしこまって受けていた。
つまりこのままいけば、会社側提案とダルトン提案が株主総会でぶつかりあい、委任状争奪戦になるようなことはない、ということだ。
問題は、はたしてそれで、スポンサーが戻ってくるかということにある。
実は、株価は北尾が会見をしていた14時まではよかった、が、北尾がダルトン側に声をかけて選任案に加わった取締役候補の一人NEXYZ.Group代表取締役社長の近藤太香巳の会見になると、株価は急落し始める。
私も会見場で近藤の会見をみていて、「なんじゃこりゃ」とずっこけた。
「これは私の現在の限られた知識でのプレゼンで、フジの優秀な社員の方々と語り合いたい」と何度も強調し、「(フジテレビの)ドラマが大好きだった」と昭和なお追従。が、いちばんおべっかを使っていたのが、北尾に対してで、「生涯の恩師」「本来は総理大臣に相応しい方」とまでもちあげていた。
これを見ていて、日枝久とフジの取締役との関係をみな想起したし、プレゼンの中身自体がなかったこともあって、近藤に対する質問は、会見終了時に北尾が「なんか近藤さんに対しても質問ないですか」と促すまでゼロという状態だった。