
今から1年前の2024年4月末、トヨタの株価は3638円だった。今年4月25日の終値は2690円と、約1000円の値下がりである。トヨタ以外の日本の自動車メーカーの株価も軒並み下落している。
値下がりの要因はいろいろあるが、最大の要因は、もちろんトランプ関税だ。自動車には25%の追加関税が課され、すでに実施されている。国・地域ごとに課される相互関税の上乗せ分の実施が90日間停止されたのに比べ、自動車メーカーは厳しい状況に置かれている。
この関税を撤回させるために、日本政府は、アメリカのトランプ政権とこれから必死の交渉を行うわけだ。
しかし、トランプ大統領の“Make America Great Again”政策の根幹にあるのが、古き良き時代のアメリカのイメージだ。自動車産業はその象徴だから、今後の交渉は一筋縄ではいかないだろう。
おそらく、自動車以外のことで大きく譲歩するか、あるいは、米国債売却をちらつかせるなど、トランプ氏を激怒させる可能性のある強硬策をとるかどちらかしかない。ただし、その場合も、自動車について米側に何の成果もなしということでは済まないのは確かだ。
解決の糸口になるのが、米国政府が今年3月に発表した2025年版の「外国貿易障壁報告書(NTE)」の日本に関する記述(計11ページ)だ。
自動車関連部分はそのうち約1ページで、これを読んでみると、米国の安全基準を日本の安全基準と同等のものとして認めろということが柱である。トランプ大統領も、4月20日にSNSで日本の「ボウリング・ボール・テスト」を保護主義的技術基準の代表例として特掲してみせた。
1期目にも、日本に米国車を輸出する際に、「ボウリングの球を6メートルの高さから車のボンネットに落とし、少しでもへこんだら不合格になる。われわれはとんでもない扱いを受けている」と主張していたことが報じられているが(もちろん、全くのフェイク)、この時は、ホワイトハウスの報道官が「冗談」だと軽く否定して終わっていた。今回もまた同じ主張を繰り返しているが、このことが示すように、米国には、日本に本気で要求できる自動車分野での大きなタマがないのが実情だ。
ただし、日本側が対応した方が良いと思われるものもある。
日本が補助金の対象としているEVの充電規格CHAdeMO(チャデモ)が世界の標準から取り残されているので、欧米車が参入しにくい環境を作っているというのは事実だ。これは改める必要があるだろう。また、テスラの急速充電器が高速道路に設置されていないこともすぐに改善すべき点だ。