事態を複雑にしているのが、昨年からのコメの高騰だ。1年間でコメの価格は2倍に跳ね上がり、関税を払ってカリフォルニア米を輸入しても日本国内のコメの値段とさほど変わらないようになった。日本の商社による輸入拡大が本格化している。
財務省も15日にあった財政制度等審議会の分科会で、コメの安定供給を目的に「ミニマムアクセス米」と呼ばれる輸入枠について弾力的な運用を求めた。
石破政権も米国と交渉のカードとして、コメの輸入を拡大する方向で検討しているとの報道が相次ぐ。
農相「国内産の減少は国益か」
この動きに危機感を強めるのが自民党農林族だ。江藤農相は、農林族のドンの一人だ。23日の記者会見でコメの輸入について、「国民の中にカリフォルニア米を輸入して店頭に並べて欲しいという声がある。その気持ちはよく分かる」としながら、食料自給率を上げることを訴え、「大事なことは食料安全保障。海外に頼る体制を築いてしまい、日本の米の国内生産が大幅に減少してしまうということが国益なのか」と述べ、コメの輸入拡大に慎重な姿勢を見せ、国内の農家や農業を守る構えを見せた。
背景には、全国の農協の大半が自民党の支持基盤となっていることがある。全国約500の農協の多くは、選挙のときに幹部らが自民党候補の陣営に入り、集票には欠かせない存在となる。
「仮にコメの関税を下げて外国産米が大量に入ってくるようになれば、(自民)党は吹っ飛ぶ」と農業団体の首脳は断言する。
コメの価格の高騰は止まらず、消費者の我慢が限界にきていることも間違いない。政権の実力が試されている。
(経済ジャーナリスト 加藤裕則)