特筆すべきイントロの「ダン、ダダン」
「世界中の誰よりきっと」に関して、スージー鈴木さんが特筆すべき点は「イントロ」という。
「一番好きなのは、イントロの『ダン、ダダン、カカカン、ダン、ダダン、カカカン』。この『ダン、ダダン』はニューヨーク出身の女性3人組のザ・ロネッツ『ビー・マイ・ベイビー』に始まり、のちのシーナ&ザ・ロケッツ『ユー・メイ・ドリーム』にも代表されるようなポップスの王道のイントロ。世界中の人気ポップスがこのイントロを使っていますが、ある意味、日本で最もヒットした『ダン、ダダン』ではないでしょうか(笑)。だから、この曲が出てきたとき、のちのビーイング系の商業的なイメージよりも、単純に“中山美穂がいい曲を出したな”という印象でした。ビーイング系といわれる楽曲が大ヒット曲をたくさん出し、時代を席巻する予兆みたいな1曲ですね」
中山美穂さん最大のヒット曲というだけでなく、ファンのみならず自然と引き付けられていたのかもしれない。だからこそ、追悼の番組などでも流れても耳に残るのだろう。
18歳で大人の雰囲気の名曲に衝撃
スージー鈴木さんが中山美穂さん大ヒット曲「世界中の誰よりきっと」よりも個人的に印象に強く残る曲が、88年リリースの「You're My Only Shinin' Star」だ。中山美穂さんが「アイドル・中山美穂」の同名で主演したドラマ「ママはアイドル」で、ラストシーンで歌われた楽曲だ。

「中山美穂さんがデビューしたのは85年。同年デビューの工藤静香(ユニット「セブンティーンクラブ」として)、南野陽子、浅香唯と並んで中山美穂さんは80年代後半の4大アイドルの1人でした。80年代前半の松田聖子、中森明菜、小泉今日子の全盛期に比べて『アイドル冬の時代』という感じではありましたが、85年デビュー組は、いまも名を残すアイドルが多かった。そんな中、85年組の中で、中山美穂さんは『You're My Only Shinin' Star』によって同期のアイドルよりも一足先に大人の雰囲気を出してきたんです。18歳になる直前の女性が、あれほどまでにムーディーな曲『You're My Only Shinin' Star』を歌い上げることができたのは、角松敏生ならではの洗練された作詞、作曲、編曲、そしてプロデュースがよかったのではないかと思います。5歳年上の中森明菜の持つ大人の雰囲気に五段飛ばしで近づいたのは衝撃的ですね」
中山美穂さんの主演映画「蝶の眠り」(18年公開)がお別れの会と同じ22日、アップリンク吉祥寺(東京)で上映されたり、26日にはニッポン放送特番「中山美穂 P.S.I LOVE YOU FOREVER」放送予定だ。「世界中の誰よりきっと」や「You're My Only Shinin' Star」などの楽曲を聞きながら中山美穂さんを思い出す一週間になりそうだ。
(AERA編集部・太田裕子)