
いまは随分と人間らしくなったな、と思います。ナチュラルに生きていくことの素晴らしさを知り、僕もまた、できるだけナチュラルに生きていきたいと思うようになりました。
「勇気をもらいました」
──約2千人のファンの前でカミングアウトを行ったのは23年7月。当初はもう日本では仕事ができないだろう、とまでふと考えてしまうほど思い詰めていた。カミングアウトの文面も、周囲のスタッフの協力を得ながら1カ月かけて書きあげた。『人生そんなもん』では、当日を迎えるまでの心の動きも丁寧に表現されている。
カミングアウトをしたら、9割の方がバックラッシュ(反発)し、応援してくれるのは1割くらいだろうと考えていました。僕の公表を受け取る方々の立場や気持ちを考える必要がありましたし、英語でも発信されていくとわかっていたので、表現方法にも気をつける必要があった。日本語では問題なくても、英語に変換されたら意味合いが異なってしまうものもありますから。
反発もあって当然だろうと思っていたので、カミングアウト後はSNS経由で届くコメントなどをすぐには読まず、距離を取ることで精神を保とうとしていました。「言わないほうが良かったのかな」「ストレートなふりをして、アイドル、アーティストとして生きていったほうが良かったのではないか」と思っていた時期もあります。
9割くらいの方々に反発されるだろうと思っていましたが、僕の予想はいい意味で外れ、体感では9割くらいの方々が称賛の声を届けてくれた。日本に限らず、さまざまな言語でメッセージが届き、本当に驚きました。カミングアウトから2年が経ったいまも、ダイレクトメッセージで相談や応援コメントが届くほどです。なかには、「與君の行動に勇気をもらい、親にカミングアウトできました」「自分はLGBTQ+ではないけれど、勇気をもらいました」という言葉もあった。
僕は性的マイノリティーの代弁者になりたいわけではなく、ただ心から人生を楽しみたいだけなんです。それをわかってくれる人たちと人生の楽しさを分かち合いたい。そんな姿を見て、勇気をもらってくれる人がいたらいいな、と思いながらいまは生きています。
(構成/ライター・古谷ゆう子)
※AERA 2025年4月21日号より抜粋