脇役でも目で追ってしまう

 ネット上でも「桜井ユキって作品によって全くの別人に見えるからすごい」「桜井さんが脇役で出てるドラマは見たくなる」といった賛辞が目立つ。前出の北村氏が語る。

「桜井さんの美しさには、外見の美しさはもちろん、お芝居や表現に対してストイックに向き合う精神の美しさが反映されていると感じます。彼女は19歳で一度上京するも、東京になじめず福岡に帰郷して飲食店に就職。23歳で再び上京して舞台演出家・石丸さち子さんの元で徹底的にお芝居の稽古を受けた過去があります。舞台の現場で『お芝居とは何か』『表現とは何か』に真正面から向き合った強さ、たゆまなさのようなものが、映画やドラマで活躍されるようになった現在も滲み出ていると感じます。

 舞台での経験を積まれているからなのか、桜井さんのセリフはひときわ素晴らしく、きれいで聞き取りやすいです。声も通っていますし、脇役として出演している作品でも、桜井さんが画面にいると映えるというか、つい目で追ってしまう感覚があります」

 10代から活動を始める役者が多い中、キャリアのスタートが23歳、俳優デビューが24歳と遅かった桜井。しかし、過去のインタビューでは、一度就職したことでマナーやお金を稼ぐことの厳しさなどを学ぶことができたなどと前向きに語っている。

 また、桜井は「人への圧はいいことを何も生まない」という考えであることから、どんな立場や年齢の人に対してもフラットに接することを心掛けているそう。驚くことに、子役に対しても話し方を変えることはないという。

 こうした芯の強さにファンも多い彼女だが、業界内からも悪い話は聞こえてこない。桜井に取材した時の印象を、前出の北村氏が振り返る。

「お会いしたのは『真犯人フラグ』放送時で、かつご自身初の写真集発売やPRイベントなどが重なっていた時期。お忙しかったはずですが、終始笑顔で対応してくださり、どんな質問にも気さくに答え、写真撮影時にこちらの要望にも瞬時に対応してくださったことから、当時、桜井さんが引っ張りだこな理由がわかった気がしました」

 共演をきっかけに22年に結婚した俳優・黒羽麻璃央との暮らしぶりにも注目が集まる桜井。まだ受賞歴は少ないが、今後は「日本アカデミー賞」などの常連になるかもしれない。

(小林保子)

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