
「万博、しんどい。早く家に帰りたい」
雨の中、万博会場を巡っていると、顔見知りの警備関係者に出会った。
「今日は夕方まで雨の予報。早く帰ったほうがいい。そのうち、地下鉄は1時間待ち、2時間待ちということになりかねない」
と教えてくれた。
万博会場へのアクセスは、地下鉄中央線の夢洲駅がメインだ。大阪市内に向かうシャトルバスの予約状況をチェックしたが、どれも満席。そこで、地下鉄で早めに引き上げることにしたが、警備関係者が言った通り、万博会場に入場する人と、早めに帰ろうとする人がぶつかり合う格好になり、駅はごった返していた。
「止まってください、押さないで」
と警備員がマイクで絶叫。規制がかかり、早めに出たにもかかわらず15分ほど駅にも入れない状態だった。兵庫県から来た男性に聞くと、
「朝は行列で1時間待ち。入場したけど雨なのであきらめて早く帰ろうとしたら、今度は地下鉄にすら乗れない。いったい、どうなっているのか」
とぼやく。一緒にいた小学生の子どもは、
「もう万博、ええわ。しんどい。早く家に帰りたい。テレビで万博見るわ」
と消え入りそうな声だった。
何とか地下鉄に乗って会場を離れることができたが、友人の記者からスマホにメッセージが入った。
「帰られましたか? 今、駅に向かうも人、人でどうにもなりません」
「地下鉄、やばい! 乗れない」
SNSを見ると「#万博ヤバい」がトレンドになるほどだった。
この友人の記者は、駅で1時間ほど待ってやっと地下鉄に乗ることができたが、ぎゅうぎゅう詰めだったという。
この万博は事前予約制やキャッシュレス決済などの導入で「並ばない万博」を売りにしていたが、いざ始まれば「並ぶばかりの万博」の様相だ。しかも、並ぶことを想定できていないためか、雨の中でずっと立って待ち続ける場所ばかりで体力を消耗し、ぐったりと疲れる。逆に晴れた日なら、屋外で日よけもない場所で待ち続けることになるため、夏場はたいへんだろう。