高濃度のメタンガスが検知されたマンホールの周囲ではキッチンカーが何台も営業していた

ガスが出た場所と知らずに飲食営業中

 万博会場で見ておきたかったのが、高濃度のガスが検知された場所だ。

 万博会場は廃棄物などの埋め立て地でメタンガスが発生している。昨年3月、トイレ棟の工事中に火花が床下にたまっていたガスに引火してガス爆発を起こし、約100平方メートルほどのコンクリートが吹き飛ぶ事故があった。

 万博協会は30億円以上かけて、ガスを排気させるファンを設置し、ガス検知器を付けるなどの再発防止策をとったが、開幕直前の4月6日にも爆発の下限濃度を超えるメタンガスが検出された。テストラン(内覧)で会場に訪れた大阪府守口市の寺本健太市議が、ガス爆発を起こした会場の西ゲート近辺のマンホールをガス検知器で測定して検出し、消防に通報したのだ。寺本氏には元消防士という肩書もあり、専門分野ゆえに万博のガス問題が再浮上していた。

 寺本氏が指摘したマンホールを探し当てると、金網で囲われ、

〈STOP! KEEP OUT! 立入禁止〉

 という札が付けられていた。写真撮影していると、警備員が寄ってきて、

「どこの社なんだ」

 とすごい勢いで問い詰めてきた。開かれた万博会場で写真を撮っていただけなのに、追い払おうとするのだ。

 このマンホールのすぐ横では、キッチンカーが何台も並んで営業をしていた。そのスタッフは高濃度ガスが検知された場所が近くにあることを知らなかった。それを伝えると、

「ここがSNSでネタになっているマンホールですか。すぐ目の前ですよ。怖いな、やばいな、これ」

 と不安げだった。

 記者と並んでガスが出たマンホールを撮影していた男性は、三重県から訪れたといい、こんな冗談を言う。

「SNSでメタンガスのことを知って、万博をやるような場所で、本当にガスが出ているのか知りたかった。金網の柵を見て、新しいメタンガスパビリオンができたのかと思った」

 寺本氏によると、西ゲートを出たバスターミナルにある「ガス抜き管」からも通常より高いメタンガスが検出されたという。

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