さくら/1981年生まれ。社会調律家。重度障害のある娘の母。一般社団法人mogmog engine共同代表、オンラインサロンLIVE MY LIFE・PLAY MY LIFE主宰(撮影:写真映像部・上田泰世)
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 AERAで連載中の「この人のこの本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。

【写真】障害のある子が生まれた親たちへ捧ぐ一冊

 『障害のある子が生まれても。』重度障害のある娘を育てる著者が、娘の病気や障害を告げられ、不安でいっぱいだった過去の自分や、いま絶望を感じている人に向けて、「絶対、大丈夫」と背中を押してくれる一冊。著者であるさくらさんがもがきながら見つけた、希望を持たせてくれたヒト・モノ・コトも紹介。手に取ると穏やかな気持ちになれる優しいデザインで、著者の思いが随所に詰まっている。さくらさんに同書にかける思いを聞いた。

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 なんで真心(まこ)なの? 私、罰当たりなことしたかな?

 次女が生後6カ月で進行性の疾患「筋ジストロフィー」と告知された頃、さくらさん(44)は自分を責め続けたという。絶望の渦にのまれ、孤立感を深めていった。

 それから15年。いまは、かむ力や飲み込む力が弱い、摂食嚥下(えんか)障害がある子どもとその家族のコミュニティー「スナック都(と)ろ美(み)」を運営し、飲食店や食品メーカーなどに、摂食嚥下障害にも対応できるサービスや商品も提案。気軽に外食できる環境を広げてきた。障害児の親対象のオンラインサロンも主宰する。さくらさんは、どんなにがんばっても変えられないことには執着せず、自分自身の物事の捉え方や生活環境など、変えられることをどんどん変えてきたという。

「真心がいなかったら、私はたぶんこんなに動いていない。あの子、全身が動かないのに人を動かすんです」

 と笑う。その一方で、

「『すごくパワフルだよね』『さくらさんだからできるよね』と言われることもあるけど、そうじゃない。非力な自分がたくさんの出会いで絶望やネガティブな感情を手放せた。そうした出会いを一つ一つひもとくことで、『私はラッキーだった』で終わらせるのではなく、誰もが再現できて一歩踏み出してみようと思える本を作りたかったんです」

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