
注目対局や将棋界の動向について紹介する「今週の一局 ニュースな将棋」。専門的な視点から解説します。AERA2025年4月14日号より。
【貴重写真】和服じゃない!スマホ片手にデニム姿の藤井聡太さん
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2025年3月30日、東京・大阪の2会場において、第22回詰将棋解答選手権が開催された。棋士、女流棋士、奨励会員、アマチュアなど100人の選手が参加。結果はただ一人100点(満点)という驚異的な成績をあげた藤井聡太七冠(22)が通算6回目の優勝を飾った。藤井の優勝回数は宮田敦史七段(43)と並び、史上1位タイとなった。
本大会は詰将棋(全10題)の正解手順を考えて記述し、採点された点数で順位を競う。出題作は一般的な将棋ファンならば時間無制限で考え、1題でも解ければ自慢できそうな難問ばかりだ。それを参加者たちは短時間(1ラウンド5題で90分)のうちに答えを見つけなければならない。
今回の出題者の一人は斎藤慎太郎八段(31)だった。斎藤作の超難問を最後まで解けたのは藤井を含め、わずかに4人。宮田や伊藤匠叡王(22)らも解けなかったのだから、その難度は推して知るべしだろう。
ほとんどの選手が2ラウンドともに時間が足りない中、藤井は早々と全題解き終え、途中で退室。毎度の光景ではあるが、今回も関係者たちの度肝を抜いた。
いつの時代も才能ある若者は詰将棋を解くのが速い。2位の岩村凛太朗三段(18)、3位の山下数毅三段(16)はいずれも奨励会員。棋士となれば、すぐに頭角を現してくるだろう。
4位の宮田七段は、藤井七冠と並ぶ本大会のスターだ。2004年の第1回大会で優勝して以来、ほぼ上位の成績を残している。筆者は若き日の宮田を見て「世の中にこれだけ速く正確に詰将棋を解ける人間がいるのか」と驚愕した。宮田を一言でいい表すなら、筆者はいまでも「天才」以外の言葉が思い浮かばない。藤井の優勝を阻止できる有力候補は、いまでも宮田だ。次回以降の活躍を、改めて期待したい。(ライター・松本博文)
※AERA 2025年4月14日号