
今、日本で生活しているとドジャースの大谷翔平選手(30)を見ない日はない。その動静が朝夕のニュースで大きく取り上げられ、テレビCMにも出ずっぱり。街を歩けば、コンビニや銀行などいたるところで大谷の姿を目にする。一体、私たちの生活にはどれだけ大谷があふれているのか。そう思って、4月のある日、1日の生活で「大谷と出会う数」をカウントしてみることにした。
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朝8時過ぎ。ニュースでも見ようかとテレビをつけると、真っ先に映し出されたのは、ちょっととぼけた表情の大谷翔平人形だった。昨年のMVPを記念してつくられたボブルヘッド(頭が揺れる人形)で、前日の試合で配られたらしい。その試合で大谷はサヨナラホームランを打っていたことから、見ていた番組では15分にわたって大谷の活躍を詳報した。別のコーナーをはさんだ後の番組中盤では、大リーグで注目される新バットの話題を大谷のコメントも交えながら取り上げる。こちらはなんとCMも含めて45分にわたる大特集だった。朝の情報番組がまるで野球チャンネルかと見まごうほど「大谷尽くし」だ。
続けて新聞を開いてみると、これもスポーツ面のトップニュースは大谷のサヨナラ弾。田中将大(巨人)の568日ぶり勝利や平野佳寿(オリックス)のNPB通算250セーブはその半分以下の扱いだった。
ニュースを1枠1回、新聞を1回としてカウントすると、朝家にいるだけで3回出会った。それもかなり長時間。この日は妻が朝早く出かけていったので、寝ぼけまなこで二言三言しゃべって見送っただけ。妻の顔よりも大谷の顔をずっと長い時間見ていることになる。
子どもを保育園に送り、コーヒーでも買おうかとコンビニに寄ると、入り口でまた、あの笑顔と目があった。白シャツ姿でおにぎりをほおばっている。「僕はおむすびのおいしい国に生まれた。」というコピーを見て、急におなかが空いてきた。
店内を見回すと、その他にも何人もの大谷がいる。おにぎり2個と、大谷が広告に出演するお茶をセットで買うと100円引きになるらしい。割引を告知するポップとお茶の広告がおにぎりコーナーだけでちょうど10枚、すべて大谷の写真入り。ついサケとツナマヨのおにぎりを手に取り、お茶コーナーに向かった。そこには、ラベルにバットを振る大谷が印刷されたボトルがずらり。レジのサイネージにまで大谷がほほ笑んでいる。このコンビニ1軒だけで、20人近い大谷翔平が目に入った。