無邪気で天真爛漫な子供っぽさを持ち続け

 とはいえ、デビュー当時の彼女を知る世代には、違和感も否めない。それは彼女が一貫して、無邪気で天真爛漫な子供っぽさを保ち続けているからでもある。

 新人時代の賞レースでシブがき隊に「最優秀」をさらわれ続けたあげく、二組受賞だった日本歌謡大賞でようやく最優秀新人賞に輝いた際「やっといただけました」と本音を口走ったり、著書の感想を聞かれて「まだ読んでないんですけど」と、ゴーストライターが書いた実情をバラしてしまったり。一昨年には、線路内への立ち入りで書類送検されるという不祥事も起こしたが、泥沼不倫などに比べたらまだにくめない気もする、彼女ならではの勇み足だ。

 最近の「ダメママ」エピソードのなかでも、個人的に好きなのは、子供の学校の書類を書く際「苗字・名前」欄の「名前」欄にフルネームを記していた話だ。間違いを指摘したヒロミに、

「苗字って何?」

 真顔で聞いたという。放送作家でもなかなか思いつけそうにない天然ぶりである。

 ただし、そんな母親像は今の世の中にあって、かつての「肝っ玉母さん」的なものより、むしろ親しみを持たれやすいのではないか。体型なども、スレンダーだった名残りをとどめており、憧れる人は少なくないだろう。

女子大生キャラ時代

 ちなみに、彼女には「妹」キャラから「ママ」キャラになるあいだに、短いながら「女子大生」キャラの時代が存在する。堀越高校を卒業後、戸板女子短大に進学。そのおかげで「オールナイトフジ」の司会もやれたし『伊代の女子大生 モテ講座』などという本も出すことができた。ちなみに「まだ読んでないんですけど」という発言はこの番組でこの本について聞かれたときのものだ。

 そんな本や失言が示すように、その頃の彼女がかもしだしていたのも「才女」というよりは「いまどきの女子大生」というイメージだった。思えば、その前の、ロリータ的「妹」キャラといい、肝っ玉母さんではない「ママ」キャラといい、彼女はそのときどきの現代っぽさを常に体現してきたといえる。

「花の82年組」の先鋒として

 なお、アイドル歌手としての彼女は、松田聖子(80年デビュー)とおニャン子クラブ(85年デビュー)のあいだに位置し、両者の接点のような存在である。プロっぽさから素人っぽさへ、個人から集団へ。彼女が先陣を切るかたちで仲良くまとまり「花の82年組」と呼ばれた面々は、そんな変化を先取りし、反映していたのだ。

 82年組では中森明菜小泉今日子のほうが大物化してしまったが、前年(当時は10月からが翌年度だった)にひと足早くデビューした伊代の活躍がなければ、未曾有の豊作とかアイドルブームのピークなどと語り継がれることにもならなかっただろう。

 そんな彼女も、あと6年で還暦。はたして、これからも時代の変化を先取りし、反映する素材でいられるのか。ただ、16歳が60歳になっても、その本質は変わらない気もする。ここはぜひ、彼女ならではの現代的なおばあちゃん像を見せてほしいものだ。

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