市職員への暴言で謝罪する市長時代の泉氏(2019年1月)

すでに街頭演説は「泉劇場」

 泉氏の暴言・放言は今に始まったことではない。明石市長時代の19年、用地買収の遅れをめぐり、市職員に「(建物に)火つけてこい」などと暴言を吐いて辞職に追い込まれた。出直し市長選で圧勝して返り咲いたが、22年10月には市長への問責決議案に賛成する会派の市議2人に、「問責なんて出しやがって。選挙で落としてやる」「問責に賛成したら許せない」などと脅す発言をして問題になり、次の市長選には出ずに政界引退すると宣言した。

 市長退任後は大手芸能プロダクションに所属し、コメンテーターなどとしてテレビのレギュラー番組も持つようになっただけに、その人気は揺るがない。街頭演説に行く先では、大きな告知をしなくても50人から100人を超す人が集まってくる。

「魅力ある政党がないと言ってすぐ撤回したけど、許してもらえなくて推薦なくなってしまった。自業自得のことやが、政治家は嘘つきが多い、ほんまのことや」

 などと“泉節”をさく裂させると大きな拍手が沸き上がり、「泉劇場」の様相。すでに下馬評ではトップ当選間違いなしといわれる。

維新の元議員に国民民主が打診?

 兵庫選挙区は2016年に選挙ごとの改選数が3(定数6)になって以降、自民党と公明党、日本維新の会が、指定席のように議席を獲得してきた。旧民主党系は2013年以降負け続けている。

 前出の立憲幹部はこうぼやく。

「選挙までまだ3カ月ほどあります。泉氏は政党の支援を失っても、すぐに挽回するでしょう。逆に、推薦を辞めたうちと国民民主党のほうが、候補者探しで大変です。泉氏ほど強力な候補は見当たらないので、うちはもう新たな候補は探していない」

 一方、維新は、昨年11月の兵庫県知事選挙に参院議員を辞職して立候補し、斎藤元彦知事に敗れた清水貴之氏を擁立する見込みだ。しかし、維新の兵庫県連幹部はこんな内情を打ち明ける。

「知事選の時に清水氏が自民党の一部の支援を受けたこともあって、参院選出馬の方針は決まっているが、ずっとくすぶっている状況。最近になって、清水氏が出馬を固辞しはじめたようなことも幹部は言っていました。『政党支持率が高い国民民主党から打診を受けている』という情報が党を駆け巡っています。旧民主党から議席を奪い、守ってきた兵庫選挙区だけに、清水氏にはぜひ維新に残ってほしい。大阪以外で選挙区の議席があるのは兵庫県だけ。負けたら日本維新の会の看板をおろして大阪維新の会になりかねない」

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