元タレントの中居正広(撮影/今村拓馬)
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 作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、先日発表されたフジテレビに対する第三者委員会の調査報告書について。

【写真】公表された第三者委員会の報告書

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 フジテレビに対する第三者委員会の調査報告書が出た。400ページ近い膨大な報告書は性的同意の重さを基軸にしたもので、中居正広氏の性暴力の事実が認められた内容だった。

 報告書では、性暴力があった当日に中居氏がどのように女性を誘ったかが詳細に記されていた。その様子はとても気楽で、フレンドリーで、楽しげである。しかし調査によれば、「メンバーに声をかけている」と誘いながら、誰も誘っていない。「(店を)探す」と言ってはみるが、探していない。最初から「自宅で二人きりになって性的な行為をする」ことが中居氏側には意図されていることが透けてみえる。

 中居氏に限らず、多くの性加害者は、まるでゲームのように虎視眈々と準備するものだ。甘い誘いをし、相手を油断させ、断りにくい雰囲気をつくり、さまざまな理由を積みかさね、「その状況」をつくる。そこに犯罪の意識はうすく、あくまでも「そうしなければ、二人きりになれない」「そうすることが、性的な行為までの道」と本気で思っている加害者も少なくない。なぜあえてそんな道を選ぶのか意味がわからないが、それこそが認知の歪みというものであろう。“狙いを定めた女性”と性的な行為をするために、だましや嘘やお金が必要だと本気で思っている男たちだ。

 報告書では事件後のフジテレビ男性社員と中居氏のやりとりも公表された。「女性が黙ることでの事態の沈静」を「ゴール」と考えていたような節も見え隠れする内容だった。なだめて、黙らせて、とにかく終わらせるために動く。そういう組織側の姿勢も第三者委員会は「二次加害」と認定した。被害女性は報告書を受けて「やりきれない」とコメントを出したが、その悔しさはどれほどのものだろう。

 それでも時代は変わった。今回の報道の大きさを受けて改めてそう思う。性被害を受けた女性は、仕事を失い、心身を損ない、厳しい時間を送ることになった。それでも数年前だったら、この事件はここまで大きく扱われなかった可能性は高い。加害者は何ら失わずにいたかもしれない。

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