AERA 2023年10月9日号

――年上のスタッフや俳優に囲まれ、現場での経験を重ねてきた。掛けられた言葉で、強く印象に残っている言葉はどのようなものだろう。

「演じすぎるな」

高橋:掛けていただく言葉に日々刺激を受けていますが、「仮面ライダーゼロワン」の監督に最初に言われた「演じすぎるな」という言葉は、心に刻まれています。「こうした役だからこう演じよう」ではなく、「これはこの人に起こっていることだから、その感情だけを考えろ」という言葉が僕にはすごく腑に落ちたんです。そこからはずっと、極論を言えば、その役を背負っている僕がその場に存在していれば、役柄を通してしっかり感情を出せるようになるのではないか、と思えるようになりました。

 その頃は、自分自身が白紙だったので、色々な方が関わりメモ書きしてくださるような感覚がありました。皆さんがメモ書きしてくださったものを僕自身が体現していく。そんな感覚でしたね。

舞台挨拶を見て研究

――芝居の面で成長したと思えた作品は何か。そう尋ねると、ドラマ「最愛」(2021年)を挙げた。

高橋:塚原あゆ子さんが演出される作品に出演するのは3度目だったのですが、それまで演じてきた役柄とはまるで違いましたし、出演するシーンの量も比較にならないほど多い作品でした。でも、その現場でも先ほどの「演じすぎるな」「何もしなくていい」という言葉を掛けて頂いて。

 吉高(由里子)さんと二人のシーンをどう演じるべきか悩んでいる時に監督がさっといらして、「吉高さんの顔だけ見ていて」と。僕は、「わかりました」と答えながらも、そう言われてしまったことが内心は悔しくて。でも、実際にそのようにしてみたら、自然と涙がこみ上げてきたんです。何も考えないからこそ、相手が発する言葉を「役」として、一人の「人間」として受け止め、自分の内側を発信していくことができるようになる。初めて「心が繋がっているな」と思えて、救われたな、という気持ちでいっぱいでした。

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