
都市部のマンション高騰の波が地方にも広がっている。「ローカル億ション」とも呼ばれ、地元の富裕層らがこぞって購入するその理由を探った。AERA2025年3月31日号より。
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東京23区内では販売価格が1億円を超える億ションが当たり前になりつつあるが、実は億ションは東京だけに限った話ではなく、密かに地方にも拡大している。
ライフルホームズの調査によると、不動産・住宅情報サービス「ライフルホームズ」に掲載された億ションの所在地は2020年時点で18都道府県だったが、2024年末には35にまで増加しているという。東京や大阪、神奈川、愛知などの大都市圏に集中しているのも確かだが、日本各地に広がっているのだ。
「ここ数年は地方への拡大傾向が顕著で、弊社ではローカル億ションと命名しました。大都市での成功を受け、供給側(ディベロッパー)が地方にも開発の手を広げたところ、企業のオーナーや老舗の経営者、医師、弁護士など、地元の富裕層がこぞって購入しました。また、アーリーリタイア層やインバウンドがセカンドハウスとして購入しているケースも見受けられます」
人手不足が高騰に拍車
こう説明するのは、ライフルホームズ総研副所長兼チーフアナリストの中山登志朗さんだ。地方の場合は、1棟丸ごとが億超えになっているわけではない。タワーマンション(タワマン)最上階の限られた戸数だけがローカル億ションとなっており、その希少性も人気に拍車をかけていると言えよう。
個人向け不動産コンサルティング会社であるさくら事務所の会長で、昨年9月の特集にも登場した長嶋修さんは指摘する。
「いずれの地域においても概ね好評で即完売も続出したことから、ディベロッパーは供給戸数(需要)を間違えなければ地方でも億ションが売れることを確信しました。そして、あちこちで物件を仕込み、足元でそれらが続々と供給されているのです」
長嶋さんは3月に刊行した著書『2030年の不動産』の中で、地方にもタワマンの波が押し寄せると宣言していた。高齢化に伴い、地方都市でも郊外から駅前などの中心部に人口が回帰する現象が見られるという。自動車免許を返納したシニアには、利便性の高い中心部のほうが暮らしやすい。行政側にとっても、人口増加や地価の上昇を期待できるタワマン建設は歓迎すべきプロジェクトだろう。
