


その後、新型コロナウイルス感染拡大の影響で店内飲食が制限される中、お持ち帰りもしやすいシュウマイという料理のメリットが注目され、居酒屋形態にとどまらず、シュウマイを主に取り扱う飲食店、販売店が増加した。さらに、昨今人気の昔ながらの中華食堂形態の飲食店「町中華」のように、近年、その雰囲気を保ちながら若い世代にも受け入れられるような「ネオ町中華」スタイルの飲食店が増えており、そのなかでもシュウマイが取り扱われる割合が高いのだ。その影響もあってか、「ネオ町中華」を含む昭和レトロ感を演出した飲食店全体で、シュウマイを取り扱う傾向が強い印象である。
人材不足の救世主にも
私の主観も含むが、「進化系シュウマイ」を提供する店舗の多くが、そのエリアの人気店になっている。あえてマイナーなシュウマイという料理を主役にし定着させようというパイオニア精神と、その分ほかにはないクオリティーの高さを追求しようとする店側の姿勢が影響していると私は推測する。素材選びから調理方法までこだわり、結果としてシュウマイ以外も含めて良質な料理が生まれ、人気店へとつながっているのだ。
ちなみに、実際に焼売酒場を運営する関係者の話では、シュウマイは「蒸す」調理が飲食店のオペレーションとして非常に優れているそうだ。機材さえ揃えば特別な技術が要らず、時間を間違えなければアルバイトスタッフでも一定の品質に仕上げることができるという。つまり「進化系」にとどまらず、シュウマイという料理が飲食業界の救世主になりうる可能性を秘めていることも、付け加えておきたい。
いずれにしても、昨今の「進化系シュウマイ」あるところに名店がある確率は非常に高く、これまでのマイナーなシュウマイのポジションを変えうる存在として、私は大いに期待している。一方で、昔ながらの中国料理店にあるシュウマイにも名品は数多く存在し、逆に、焼き餃子や小籠包に比べて少ないものの、シュウマイがある中華料理店にハズレが少ないのも事実である。
いずれにしても、今の時代はシュウマイの文字を目にしたら、入店すべし、買うべし、である。(シュウマイ潤)

※AERA 2025年3月31日号