
全国各地のそれぞれの職場にいる、優れた技能やノウハウを持つ人が登場する連載「職場の神様」。様々な分野で活躍する人たちの神業と仕事の極意を紹介する。AERA2025年3月31日号にはDM三井製糖 DM三井グループ研究所 企画調査グループ 坂崎未季さんが登場した。
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「スプーン印」「ばら印」などの砂糖商品で知られるDM三井製糖は、世界に先駆け1985年に日本で最初に食品用途で「パラチノース®︎」を発売した。パラチノースは、天然由来のエネルギー源で、ゆっくり吸収される性質を持つ。その吸収速度は白砂糖の5分の1ほど。血糖値の急激な上昇がおさえられ、持続的にエネルギーを供給できる“次世代の糖質”として注目を集めている。
パラチノースは食品素材として、Yakultから発売しているミルミルや、大正製薬のリポビタンキッズゼリーなど、様々な食品に使用されている。こういった食品メーカーなどが開発する商品に、パラチノースを活用してもらうための裏付けをとるための研究企画を担う。
入社2年目のとき、アスリートのための研究を始めた。各国でも医療や健康、スポーツ分野においてパラチノース研究が進められていたが、日本ではまだまだだった。
砂糖やブドウ糖は、体内への吸収が早く、摂取後すぐに血糖値が上昇するが、パラチノースは小腸全体でゆっくりと吸収される。このため、エネルギーの維持も長くなることで、アスリートのパフォーマンスが向上するという仮説を実証するための研究だ。
最初は、大学のスポーツ学部の先生に研究企画としてデータをとってもらっていた。そのうち、直接自分でデータを取りたいと、大学の博士課程に進むことを決意。仕事と大学の両立はかなり苦労したが、3年間の研究は実りが多かった。
会社ではできない特定の年齢層の人々を対象に、運動する前に食べた物が運動中の脂肪の利用にどう影響するのか、エネルギーをどう作り出しているのか、代謝の変化など研究を重ねた。
これまでの研究成果を持って販促部署が営業に行くことで、採用してくれる企業が増えた。徐々に社内でも協力してくれる人が増え、自社のパラチノース100%商品も売り上げが伸びた。
「自分の研究しているものが、かけがえのない家族にすすめられるものだから、多くの人にすすめられます」
次なる研究は、高齢化社会の日本で健康的課題を抱える人々と、働く世代に対しての日々のパフォーマンスを突き詰めることだ。(ライター・米澤伸子)
※AERA 2025年3月31日号

