電気イスゲームで対戦した今田耕司と東野幸治
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 テレビバラエティーの世界には明文化されていない「お約束」が存在する。出演者やスタッフがそれを意識しているのはもちろん、大半の視聴者もそのことをよくわかっている。

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 ここで言う「お約束」とは、番組を盛り上げるためのさりげない演出のことだ。たとえば、ロケ番組で飲食店に行ったタレントがそこで食事をする場合、食べた瞬間に大げさなリアクションをとるのが当たり前になっている。目を見開いて口の中の食べ物をゆっくりと噛み締め、飲み込んだ後に笑顔を見せて「おいしい!」などとはっきり大きな声で感想を漏らす。

 その人が普段食事をするときに、一口食べるたびにそのような大きいリアクションをしているのかというと、まずそんなことはないだろう。視聴者に向けてその食事のおいしさをわかりやすく伝えるために、意図的に大げさな反応をしているのだ。

 バラエティー番組には、この手のお約束が無数に存在する。そのほとんどは視聴者にも認知されているし、その上で自然に受け入れられている。出演者もその暗黙のルールに従って淡々とタスクをこなしている。

ドッキリ系は生の反応もありつつも

 ただ、ここにドキュメンタリーの要素が絡んでくる場合、事態は少々複雑になる。たとえば、出演者を何らかの形で騙すようなドッキリ系の企画では、企画の意図に気付いていない人間の生の反応が求められているため、原則としてそこにお約束は存在しないことになる。

 とはいえ、出る側がドッキリだと気付いているかどうかというのは、視聴者には知り得ないことだ。何らかの事情でドッキリだと気付いていたり、その可能性が高いことをわかっていたりしても、出演者はそれがドキュメンタリーであるという体裁を保つため、お約束に従ってリアルを演じなければいけない。

 普通の状況であれば、お約束が存在することは視聴者にも明らかになっているのだが、ドキュメンタリー性がある企画ではそうではないため、出演者はより難しい舵取りを求められることになる。

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今田と東野の電気イスゲーム